検索窓
今日:30 hit、昨日:151 hit、合計:19,835 hit

9 ページ9

プリクラの機械から出てきた2人を出迎えたかと思いきや、兄ちゃんが葵ちゃんと撮りたいからと勝手に連行していった。


せっかく友達同士で遊んでいるのに、どこまでも我が道を行く兄ちゃんに少しだけ頭が痛くなる。

ごめんと謝れば、カップルなのだから当然だとAちゃんは言った。


兄ちゃんたちが入って行った機械からは時々話し声が漏れる。

楽しそうで何よりだが、元々葵ちゃんと一緒に遊んでいたAちゃんを放置するのは気の毒だった。



「暇ならあっち見に行かね?」

「そうですね。行きましょうか。」



このままプリクラの機械の前にいても仕方がない、そう思ってAちゃんを連れ出してクレーンゲームの方に来た。

あのぬいぐるみが可愛いとか、あのお菓子が好きだとか、そんな他愛もない会話が楽しく感じる。


最近人気のキャラクターの大きなぬいぐるみの前で、Aちゃんの足が止まった。

じっと見つめる目がきらきらしているように見えた。




「欲しいの?」

「あの奥にあるうさぎが欲しくて…。」



奥に並べられている中にいる一体を指差すAちゃんに、ちょっと待っててとその場を離れた。

店員に景品を取り替えてもらうよう声を掛ければ、取りやすい位置に置いてもらうことが出来た。



「ゲーセンとか久しぶりだから取れっかなー。」

「えっ、あの、」

「いいとこ見せてやるか。なんてな。」



財布を取り出すAちゃんに待ったをかけて、自分の財布から金を入れた。

女に金を出させるのは男として格好つかないと言ったことがある。

Aちゃんとはそういう関係ではないけれど、少しくらいは格好つけてもいいよなと自問自答する。


店員が気を利かせたおかげもあるが、3回で取れたのは割と運が良かったと思う。

うさぎのぬいぐるみを取り出してAちゃんに渡せば、クールな表情が崩れて嬉しそうに笑っていた。



「竜胆さん、ありがとうございます…!」

「別にいいよ。てか、そんな風に笑うんだな。」

「すみません、つい嬉しくて…。」



はっと慌てふためくAちゃんが面白くてつい吹き出してしまった。

あまり変化のない表情から年相応の笑顔になるギャップに、つい見惚れそうになる。



「あの、お金、」

「いらねえよ。その代わり、それ大事にしろよ?」

「…はい…!」



はにかんでぎゅっとぬいぐるみを抱きしめるAちゃんが可愛く思えたのは、きっと気のせいじゃない。

10→←8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
143人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。