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プリクラの機械から出てきた2人を出迎えたかと思いきや、兄ちゃんが葵ちゃんと撮りたいからと勝手に連行していった。
せっかく友達同士で遊んでいるのに、どこまでも我が道を行く兄ちゃんに少しだけ頭が痛くなる。
ごめんと謝れば、カップルなのだから当然だとAちゃんは言った。
兄ちゃんたちが入って行った機械からは時々話し声が漏れる。
楽しそうで何よりだが、元々葵ちゃんと一緒に遊んでいたAちゃんを放置するのは気の毒だった。
「暇ならあっち見に行かね?」
「そうですね。行きましょうか。」
このままプリクラの機械の前にいても仕方がない、そう思ってAちゃんを連れ出してクレーンゲームの方に来た。
あのぬいぐるみが可愛いとか、あのお菓子が好きだとか、そんな他愛もない会話が楽しく感じる。
最近人気のキャラクターの大きなぬいぐるみの前で、Aちゃんの足が止まった。
じっと見つめる目がきらきらしているように見えた。
「欲しいの?」
「あの奥にあるうさぎが欲しくて…。」
奥に並べられている中にいる一体を指差すAちゃんに、ちょっと待っててとその場を離れた。
店員に景品を取り替えてもらうよう声を掛ければ、取りやすい位置に置いてもらうことが出来た。
「ゲーセンとか久しぶりだから取れっかなー。」
「えっ、あの、」
「いいとこ見せてやるか。なんてな。」
財布を取り出すAちゃんに待ったをかけて、自分の財布から金を入れた。
女に金を出させるのは男として格好つかないと言ったことがある。
Aちゃんとはそういう関係ではないけれど、少しくらいは格好つけてもいいよなと自問自答する。
店員が気を利かせたおかげもあるが、3回で取れたのは割と運が良かったと思う。
うさぎのぬいぐるみを取り出してAちゃんに渡せば、クールな表情が崩れて嬉しそうに笑っていた。
「竜胆さん、ありがとうございます…!」
「別にいいよ。てか、そんな風に笑うんだな。」
「すみません、つい嬉しくて…。」
はっと慌てふためくAちゃんが面白くてつい吹き出してしまった。
あまり変化のない表情から年相応の笑顔になるギャップに、つい見惚れそうになる。
「あの、お金、」
「いらねえよ。その代わり、それ大事にしろよ?」
「…はい…!」
はにかんでぎゅっとぬいぐるみを抱きしめるAちゃんが可愛く思えたのは、きっと気のせいじゃない。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時