検索窓
今日:148 hit、昨日:99 hit、合計:19,802 hit

8 ページ8

何だか胸の奥が少しだけ温かいような、不思議な感覚に浸っていた時だった。

兄ちゃんと葵ちゃんが戻ってきて、何を話していたのかと興味深々に聞かれる。


なんて返そう、そう悩んでいる間にAちゃんが口を開いた。



「2人が仲良くていいよねって話。」

「私たちの話…!?そんな、もっと他にネタが…。」

「幸せそうな葵を見てると、私も恋がしたいなって思うよ。」



相手はいないけど。

そう呟いたAちゃんの横顔は大人びていて凛としていた。

まるで、さっきの話は2人だけの秘密みたいで。

こういうの、なんかいいなって思ったり。


兄ちゃんの視線に気付かないフリをして、烏龍茶を啜った。

Aちゃんに綺麗って言ったのは、嘘じゃない。



「Aちゃん、プリ撮ってみたい!」

「私も。そろそろ行こっか。」



フルーリーを食べ終わった葵ちゃんがAちゃんにそう提案する。

プリクラ、かあ。ザ・女子高生って感じだな。


2人がいいと言うから、兄ちゃんと俺も着いていくことになった。

ゲーセンなんて随分行っていないなと、少し懐かしい気持ちになった。



「私プリ撮ったことないんだ。Aちゃんに任せる!」

「じゃあ……、これにしよ。」



Aちゃんが複数の機種から一つ選んで、2人は中へと入って行った。



「俺も葵と撮りてえなー。」

「撮ればいいじゃん。」

「じゃあ竜胆はAちゃんだな。」

「何でそうなるんだよ。」



俺をじっと見つめて、にやりと笑う兄ちゃん。

意味深なその表情に少しだけ苛立ちを感じた。

どうせいつもみたいに俺をからかって面白がっているだけだと思うけれど。



「Aちゃん狙う?」

「だから…そんなんじゃねーよ。」



綺麗だし、いい子だと思う。

だからと言って、好きとか嫌いとか、付き合うとか付き合わないとか、そういうことは何も考えていない。



「そういうつもりねーから。」

「ふーん…?」



人を好きになる感覚なんてどこかに置いてきた。

散々人の道を外れたことをして、今更普通の人間のように恋愛をするなんて。



「俺には綺麗すぎて手が出せねえわ…。」



小さな独り言はゲーセン特有の喧騒に紛れて消える。

気付いているのかそうじゃないのか、兄ちゃんがふっと笑った。


「ちょっとだけ、兄貴が羨ましいよ。」

「お前にもそういう相手が現れるよ、多分な。」



その台詞、さっき俺がAちゃんに掛けた言葉によく似ていた。

9→←7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
143人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。