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微睡の中聞こえたノックの音にゆっくりと目を開ける。
今何時だろう。ベッドサイドに置いた携帯を取って時刻を確認したら、もうとっくに昼を過ぎていた。
昼から出掛けるつもりでどこへ連れて行こうかと考えていたのにやらかした。
夜は家に帰してやらないといけないから、一分一秒でも長く一緒にいたいと思っていたのに。
すやすやと眠るAの綺麗な黒髪を撫でて、脱ぎ散らかしたシャツを拾い上げる。
多分、ドアの向こうには葵ちゃんがいるはずだ。兄ちゃんならノックなんかせず勝手に入ってくるのだから。
「…ごめん、爆睡してた。おはよ。」
「おはようございます。なかなか起きてこないから珍しいなと思って。」
「夜更かしし過ぎちまった。Aはまだ寝てるけど。」
兄ちゃんとは違って割と規則正しい生活をしていた俺が昼になっても起きてこない所を見せたのは初めてだった。
Aを起こすからちょっと待っていてと一旦ドアを閉める。あいつも服、着てないからな。
「A、A。」
「…んー…、…あとちょっと…、」
「もう夕方だけど?」
「えっ…嘘…寝過ぎちゃった…!」
慌てて飛び起きるAが面白くて、つい吹き出して笑ってしまった。
勿論嘘だと告げれば、してやられたと言いたげな顔で睨まれた。全然怖くないんだけどな。寧ろ可愛い。
「もう…竜くん意地悪だね。」
「怒った?」
「そんなことで怒らないよ。起こしてくれてありがとう。」
ベッド下に落ちた服を拾い、特に恥じらいもなく淡々と身なりを整えるA。
おはようと挨拶を交わし、触れるだけのキスをした。
こういうの、いいな。毎日こうだったら最高に幸せなんだろうな。
「寝起き悪いの?」
「んー…あと5分とか言っちゃう。」
「一人暮らしなのにそんなんで寝坊しねぇ?」
「今の所はまだ大丈夫。」
Aは大人びていてしっかりしているから、すんなり起きられないことが意外だった。
俺は寝起きが良い方だと思っているから、もしも同じ部屋で生活出来たら毎日起こしてあげられるのにな。
リビングで葵ちゃんが待っていると伝えれば、嬉しそうに笑って部屋を出て行った。俺もその後に続く。
「Aちゃんおはよう!昨日は寝落ちしてごめんね…。」
「おはよう。女子会の続きはまた今度だね。」
そう言えば兄ちゃんの姿が見当たらない。葵ちゃんに聞けば、まだ寝ていると困ったように笑っていた。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時