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Aの初めては俺が貰った。
それがどうしようもなく嬉しくて、幸せを噛み締めながら事後の余韻に浸る。
いつもなら不快に感じることだって全てが幸福感へと変わる。汗ばんだ肌同士が隙間なくぴたりとくっついていることも、ぐちゃぐちゃになったシーツも、何もかも。
最高に気持ちが良かった。これ以上ないくらい、世界で一番幸せなのは俺だと思えるくらいに。
ただ欲を満たすだけの行為しか知らなかった。それ以上の興味なんてなかった。
こんなにも気持ちが良く、心も体も満たされるなんて知らなかった。
俺の常識はAと出会ってから次々と変わっていき、新しい感情が芽生えてくる。
Aが俺を変えてくれた。
ああ、好きだ。愛している。そんな言葉じゃ足りないくらい、Aへの愛情が溢れ出て止まらない。
「A、大丈夫か?」
「うん、平気。落ち着いてきた。」
俺の手をやんわりと握りながらぐったりと横たわっていたAが、浅い呼吸を繰り返しながら微笑みを浮かべた。
凛とした表情、柔らかな笑み、時折何を考えているか分からない無表情。どんな表情も大好きだ。
その好きな顔をぐちゃぐちゃに歪ませた。ちょっと泣かせた気もする。
そんな表情は世界で俺しか知らないんだと思ったら、どうしようもなく嬉しくて堪らなかった。
「ごめんな、歯止め効かなかった。」
「竜くんだから全然いいよ。私、凄く嬉しかったから。」
汗で張り付いた前髪を掻き分けて額にキスを落とす。擽ったそうに身を捩らせて、またシーツが音を立てた。
馬鹿みたいに有り余った体力はまだAを求めて体が疼く。
さすがにこれ以上はAに無理をさせてしまうと分かっているから残った理性で押し留めた。
「竜くん、大好きだよ。好きで好きで、おかしくなりそう。時々不安になる。」
「え、何、どういうこと?」
常夜灯に照らされた瞳が天井を見つめていた。
今の俺達に不安なんて言葉は似合わないんじゃないかって勝手に思っていたから、Aの漏らした本音に心が掻き乱される。
「こんなに好きになっちゃって、竜くんがいなくなったらどうしようって。これからもっと依存しちゃうかも。1人で生きていけなくなるかも。」
「いいじゃん、それで。俺がいないと生きていけねぇくらい依存すりゃいいじゃん。」
「…じゃあ、いっか。」
格好つけて言ったけれど、Aがいないと生きていけないかもしれないのは間違いなく俺の方だよ。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時