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静かなリビングには誰もいなくて、飲み食いしっぱなしの菓子やジュースがそのまま広げられている。
片付けは明日でいいと見て見ぬふりをして、名残惜しそうにそれを眺めていたAの手を引いた。
「俺の部屋。兄貴以外が入るの、Aが初めて。」
「葵は？」
「ないよ。用ある時はノックされる。」
自分の好きな物で溢れた、自分だけの世界。ここへ女を、しかも恋人を招くことになるなんてついこの間まで考えられなかった。
綺麗な部屋だと見渡すAに、こっちへおいでとベッドに腰掛けながら手招きする。
「寝転んでもいいし、好きにしていいから。」
「竜くんがいつも寝ているベッド。」
「今日一緒に寝るベッド、な。」
肩を引き寄せ、唇を重ねる。
特別驚いた様子もなく俺の背中に腕を回してキスを受け入れるAの頭をゆっくりと撫でた。
じわじわと体の中心に熱が集まるのを感じ、これ以上は歯止めが効かなくなりそうだとギリギリの理性で唇を離した。
「夜更かしし過ぎたし、寝るか。」
「うん。」
真面目ぶった言葉で本音を隠して、掛け布団の中へと潜り込む。
兄ちゃんのよりは大きくないベッドだが二人が並んで横になっても充分すぎるスペースがある。身動いだAがふかふかで気持ちいいと微笑んだ。
常夜灯に切り替えて「おやすみ」と頭をぽんと撫でる。
薄暗い中でもはっきりと、Aの瞳が俺だけを映しているのが見えた。
「竜くんの匂いでいっぱい。」
「…煽んの禁止。」
「前に言ったこと覚えてる？」
この会話には既視感がある。
Aと付き合えることになったあの日、あの夜に交わした話を思い出す。
キスしたいが早々に手を出し過ぎかもしれないと踏み止まった俺に言った、Aの台詞が頭の中に木霊する。
「私は竜くんが大好き。だから嫌なことなんて何一つないよ。」
「覚えてる。でもな、俺は今それ以上のことしたいって思ってる。」
「我慢してるって気付いてたよ。」
やっと言ってくれたねと、目を閉じて微笑むA。
必死に隠して余裕ぶっていたのが馬鹿みたいだと嘲笑した。
「Aの前では格好つけさせろよ…。」
「いつだって格好いいよ。」
「…もう、後戻り出来ねえからな。」
優しくする、だけど最後まで止めてやらない。
曇り一つない綺麗な瞳が全てを受け入れる覚悟を宿している。もう躊躇わない。Aに覆い被さり、耳元に唇を寄せた。
「Aの全部…俺が貰う。」
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れん(プロフ) - ｋｉｚｕｎａさん» ｋｉｚｕｎａさま、コメントありがとうございます！こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです！好みだなんて勿体無いお言葉…！更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ！ (2月25日 23時) (
レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
ｋｉｚｕｎａ(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です！これからも頑張って下さい！ (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れん | 作成日時：2024年1月30日 21時
