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「誕生日おめでと!盛り上がってくれてサンキューな!」



次の奴にハイタッチしてブースを降りる。

止まない歓声とアンコールに、今日の主役は俺じゃないから勘弁してくれと苦笑した。


見上げた視線の先にいるAは、葵ちゃんと二人で手を振って出迎えてくれた。



「あっちぃー…!」

「今日のプレイ良かったじゃん。さすが俺の弟だなー。」



いつもなら煩いとか言うくせに、今日は兄ちゃんも上機嫌でちょっと怖い。


人より少し高い所から見下ろす景色は最高だった。興奮冷めやらない体がまだ火照っていてる。

乾いた喉に流し込んだ飲みかけのビールは温くなっていて、キレが悪かった。

覗き込んだAのグラスも、氷は殆ど溶けている。



「奢るからもう一杯飲もうぜ。何がいい?」

「んー…緑茶。」

「了解。」



一緒に行くと席を立つAに、座って待っていてと頭を撫でる。

そんな俺を見た兄ちゃんが「お代わり」とグラスを差し出してきたが、葵ちゃんが止めてくれた。


バーカウンターに立つ顔見知りにドリンクを注文すると、見慣れない女を連れているなと話を振られる。

俺の嫁だと返せば、驚いたように目を丸くした。

もう遊びに来ることもなくなるし、違う女を横に置くことも絶対にない。



「竜胆くん変わったね。」

「違ぇよ、あいつが俺を変えてくれた。」

「竜胆くんのそんな顔、初めて見たよ。」

「本気だから。」



手を振ってカウンターを離れる。


俺が幸せにしたいと唯一思えた、世界でたった一人の愛しき存在。

男だろうが女だろうが、誰も手を出すことは絶対に許さない。



「ただいま。」

「竜くんありがとう。」



薄く微笑んで、差し出したグラスを両手で受け取るA。



「ちゃんと見ててくれた?」

「勿論。竜くんすごく格好よかったし最高だった。」



隣に兄ちゃん達がいることも、少し汗をかいたことも忘れて、Aの頭を抱き寄せる。

触れたい衝動を抑えられなかった。

DJブースにいたのは30分もないくらいなのに、心なしか随分と長い時間離れ離れだったような気がする。


Aの感触、体温、香り。

求めていた全てが俺の腕の中にあって、心も体も満たされていくのを感じた。



「私の彼氏は世界一格好いいでしょって自慢したくなるくらい、格好よかった。」



思わぬ台詞にどきっとする。照れるなんて感覚は久しぶりかもしれない。

そんなことを言うAは世界で一番可愛いよ。

38→←36 【side Ran】



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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

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