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36 【side Ran】 ページ36

狭くて薄暗いクラブに漂う独特の雰囲気は嫌いじゃないが、竜胆に比べたら自ら出向く回数はそう多くなかった。

葵と付き合い始めてからは勿論、一目惚れをしたあの日からこういう場所は避けて来た。


今日は特別だ。

隣には竜胆のDJに興味津々な嫁がいるし、格好つけたがりな弟は最近付き合い始めたAちゃんにいい所を見せたがって連れて来た。

つまるところ、今日の俺は彼女たちの保護者的立ち位置なのだろう。


俺がいれば馬鹿みたいな女は寄ってこないし、ダル絡みするような男も声を掛けないだろう。

だから俺にAちゃんを預けて、意気揚々とブースへと向かって行ったのだ。

竜胆め、俺を使った代償に明日はモンブランを買って来させてやる。



「凄い音!照明も綺麗!」

「ほんとに。」



鳴り響く重低音の中、楽しそうに会話している彼女達が微笑ましい。

たまには外で飲む酒もいいかと、交換したカクテルに口を付ける。まあまあ美味い。


竜胆がブースに立った瞬間、箱が揺れた。相変わらず煩いなと苦笑する俺とは対照的に、葵とAちゃんは竜胆に手を振っていた。



「竜胆さん見えてるかな?」

「多分。今にやってしてた。」

「あいつテンション爆上がりしてんじゃん、ウケる。」



遠くで楽しそうに笑う竜胆を見て、ふと気付く。

ブースに立つ竜胆はパーカーを脱いでいて、下に着ていた黒い半袖姿だった。

暑いからパーカーは腰に巻いたのかと納得し、葵を挟んで隣にいるAちゃんに視線を移す。


驚いた。Aちゃんが有り余った袖をぷらぷらと揺らしている。それは竜胆が一番大事にしているパーカーだった。



「Aちゃん、それどうした?」

「竜くんが預けるって渡してきたので交換しました。」

「あ、ほんとだ!Aちゃんが竜胆さんの着てる。」



隣にいて気付かなかったのか、葵の少し間抜けなところが可愛い。なんて、それは置いといて。


俺以外の誰かが触る事すら許さなかったのに。

そんな大事なものを預けるということはつまり、竜胆はそれだけAちゃんに真剣なのだ。



「俺の特別って言ってました。」

「それ、あいつがすげー大事にしてるやつなんだよ。」



心底愛してるんだな、本当に。

竜胆が遊んでいるとは微塵も思っていなかったけれど、本気度が違うのだと思い知らされた。


俺が心配する必要なんてどこにもなかったな。

お前はお前で、心に決めた嫁を絶対幸せにしてやれよ。

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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

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