22 ページ22
帰宅して早々にAにメッセージを送り、スマホをテーブルに置いた。
リビングの大きなテーブルに課題を広げて必死に格闘している葵ちゃんと、隣でスマホを弄りながらだらだらと寛ぐ兄ちゃん。
返信を待つ間に風呂に入ろうと、何か言いたげな兄ちゃんを置いて逃げる。
あのにやついた顔に捕まると長いんだよな、バレないようにこっそり溜息を吐いた。
ふとした瞬間にキスしたことを思い出しては、そっと指先を唇に宛てがって感慨深くなる。
彼女が出来るって、こんなに浮ついた気持ちになるものなんだな。知らなかった。
まるで俺が俺じゃないみたいだ。
でも、これはこれで心地良くていいかもしれない。
兄ちゃんは葵ちゃんと付き合うようになって丸くなったなと思ったけれど、今なら分かる。
俺もきっと、すぐにそうなると思うから。
髪をくしゃくしゃと拭きながらリビングに戻ると、兄ちゃんと葵ちゃんが揃って俺の方を向いた。
「何?」
「りーんどー。見たぜー?」
「すみません見えちゃいました…!」
にやぁ…と笑う兄ちゃんと、顔の前で掌を合わせて謝る葵ちゃん。
何が、そう聞く前に全てを察した。
いつもの癖でテーブルに置きっぱなしにしたスマホが視界の端に映る。
「…俺が悪いわ。」
それを拾い上げてタップすれば、数分前にAからメッセージが届いていると通知が表示された。
見たんだな、これを。
「よかったなあ、竜胆。」
「うん。」
「Aちゃんと竜胆さんが…!なんか、私まで嬉しくなりました…!」
「ありがと。」
自分の口から直接話すべきだったかもしれないが、こんな形とは言え知られたならそれはそれで良かった。
隠すつもりはなかったが、どう話そうかと迷っていたから手間が省けたと前向きに考える。
「俺にも大事にしたい嫁が出来たわ。」
スマホに届いたメッセージに返信をして、昼間に買ったうさぎのスタンプを送る。
昨日の夕方まで何の興味もなかったこのキャラクターも、今では結構好きになってきていた。
「よかったじゃーん。昨日尾行して正解だったな♡」
「…尾行…!?蘭ちゃんー!!」
「あっ、やば…♡」
昨日尾行したことは内緒だったのに、兄ちゃんがうっかり口を滑らせてバレてしまった。
怒る葵ちゃんと、到底謝っているとは思えない顔で笑う兄ちゃんのやり取りを聞き流しながら、今日はいい日になったなと思いに耽った。
143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時