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どれくらいそうしていただろうか。

お互い言葉は発さず、ただただ温もりを共有するかのように抱き合っていた。

静かな部屋にはAと俺の息遣いだけがそっと響いて、それがたまらなく愛おしくてまた強く抱き締める。


嫌がることはしないと信じている。

この家に足を踏み入れる前、確かにAはそう言った。

Aがそう信じているのならそれに応えるのが俺の務めだと、キスをしたい欲望を必死に押し込める。


本当はしたい。今すぐにでも、溢れんばかりの愛してるって気持ちを、唇を重ねて移してやりたい。



「…竜胆さん、いい香りがします。」

「煽んのダメ。俺今すっげー我慢してる。」

「竜胆さんは私の嫌がることはしませんよね。でも、」



私は竜胆さんが好きだから嫌なことなんて何一つありません。


小さく呟いたAの吐息が俺の髪を揺らす。

本当、ずるい。

そんな煽り文句はどこで教わったんだ。体を離して少し潤んだ瞳に俺を映す。



「竜胆さん、好きです。」

「俺も好き。めちゃくちゃ好き。もうAのことしか考えらんねえくらい好き。」



子供のように「好き」と繰り返す俺の頬にAの手が触れた。

少し冷えた指先が気持ち良くて目を細める。



「キスしたことある…よな?」

「あります。」



そりゃ、そうだよな。

彼氏が出来たのはこれが初めてじゃないのは知っているし、中学生でもキスくらいする。


俺はそれ以上のことを散々してきたくせに、ファーストキスが俺じゃないことをほんの少しだけ不服に感じてしまった。

理不尽だよな、自分で自分の思考に呆れてしまう。



「…俺もあるけど、キスしてえと思ってするのは初めてなんだわ…。ごめん、ダセェこと言ってるな。」

「どんな竜胆さんでも格好いいです。」



優しく微笑んだAがゆっくり瞳を閉じる。

長い睫毛がぴくりと震えたのを見て、そっと眼鏡を外した。



「絶対、幸せにする。誰よりも、何よりも、Aのこと大事にするから…。」



細い腰に腕を回して引き寄せた。

柔らかな唇に触れる。

理性も何もかもが飛びそうなくらい気持ち良くて、幸せってこう言う時に使う言葉なんだなって実感した。


重なった唇の隙間から漏れる吐息も、甘い声も、全部が愛おしくて堪らない。

Aに幸せにするなんて言ったけれど、本当に幸せなのは俺かもしれないな。


こんなにも大事にしたいと思える存在と、出会うことが出来たのだから。

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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

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