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「…その話、黙っててもよかったんじゃないですか?私が知ることなんて、一生なかったかもしれないのに。」
Aがそう呟いた。
確かにそうだった。こんな話、聞かれない限り教えることはなかったし、隠すことだって出来る。
でも、Aには正直でいたかった。
俺が今までしてきたことを隠したままじゃ、「好きだ」なんて言葉が嘘みたいになりそうだったから。
騙しているみたいで、自分で自分を許せなかったから。
だから全部、知ってほしかった。
真っ直ぐAを見つめて、ずっと伝えたかった言葉を紡ぐ。
「俺の女になってくれ。」
本当は、土曜日まで我慢しようと思っていた。
それなのに、顔を見て話をしたら、もう抑えきれそうになかった。
もしも、返事がNOだったとしたら?
それでも、簡単に諦めることは出来そうにない。
例え兄ちゃんのように2年掛かっても、その倍以上掛かってもいい。
Aじゃなきゃ嫌なんだ。
「何で私なんですか?」
静寂の後、Aが問う。
YESでもNOでもない言葉に、俺は酷く動揺した。
そう言われるなんて微塵も予想していなかったから。
「な、何で…って…?」
「私のどこが好きなんですか?」
答えてください。
澄んだ瞳が俺を捕える。
「…好きなとこなんてたくさんある。」
クールで凛としていて、涼しげな目元も薄い唇も、その全てに魅了された。
そのくせ、時折見せる満面の笑みはギャップがあって心を掴まれた。
艶のある綺麗な黒髪はいつか俺の好みに変えてみたい。
ダチ思いで優しくて、聞き上手なところも気に入っている。
バイト頑張ってて偉いから、お疲れって褒めてやりたい。
物静かで落ち着いているくせに、喧しいうさぎのキャラクターが好きなところも可愛い。
泣き出しそうな顔で俺を頼ってくれた時、俺が守ってやりたいと思った。
「竜胆さん、もう、大丈夫です。」
「全部好き。分かってくれた?」
「すごく、痛いほどに。」
少し頬を赤らめて、照れくさそうに微笑むA。
隣に行っていいかと聞けば、小さく頷いた。
「俺の女になって。」
「私のこと、大事にしてくれますか?」
「当然だろ。後悔させない。」
だから、俺を選んで。
そっと手を伸ばし、頬に触れる。
Aの細い指が俺のパーカーの裾をきゅっと掴んだ。
「私の好きな人、竜胆さんです。」
「A、好きだ。」
どこにも行かないようにと、ぎゅっときつく抱きしめた。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時