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遅めの夕飯を食べ終えて、他愛もない話をする。

今日学校で葵ちゃんから俺の年齢を聞いたそうで、学校に行っていないのかと聞かれた。



「ガッコー行くように見えるか?」

「見えません。不良ですね、竜胆さん。」



クスクスと笑うA。

即答すんなよと、髪を乱すように頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

ごめんなさいと笑ったまま謝るAからの表情からは申し訳なさなど微塵も感じられない。



「不良、嫌い?」

「何でですか?好きも嫌いもないですけど。」

「聞いただけ。」



少しずつ、確実に距離を詰めるような問い掛け。

もしも不良が嫌いだなんて言われたとしても、もう手遅れなのだけれど。

今更過去は変えられないし、今すぐ更生なんて出来ないのだから。


そんな俺の本心など知らないAは、喧嘩してたら怖いなと思うとだけ呟いた。

これからはなるべく喧嘩するのやめよう、目を閉じて頷いた。



「聞きたいことあんだけど。」

「何ですか?」



長い黒髪が揺れる。



「好きな奴、いる?」



真っ直ぐ瞳を見つめながら、そう尋ねた。

静かな部屋だから、この煩い心臓の音も聞こえてしまいそう。



「います。」



淡々と、いつもの澄ました顔でそう言った。

その答えは予想外だった。

いないって、言って欲しかった。なんて、そんなのは俺のエゴだ。


真っ直ぐ俺を見つめる瞳が痛いほど突き刺さる。

正直もう、心がぐちゃぐちゃになりそうだった。



「竜胆さんはいますか?」

「…いる。」

「そうですか。」



しんと静まり返る部屋。

土曜日が楽しみで、それでも我慢出来ずに会いに来て、浮かれていた気分はどん底まで沈む。

この苦しい気持ちも、恋なんだな。



「俺の話聞いて。」

「はい。」



俺は、今まで誰のことも好きになったことがない。

女なんて何もしなくても勝手に近寄ってくるし、たくさんの好意を向けられてきた。


俺のスペックが人並み以上なのも、充分理解していた。

それを上手く利用して、自分に都合よく生きてきた。


特定の女なんかいらなかった。煩わしいのは嫌いだった。

適当に遊べて、適当に欲を満たせて、後腐れのない関係ばかりたくさん持ってきた。


誰にも執着しなかったのに、今は心の底から欲しいと思う女が出来た。

他の男に渡したくない、自分だけのものにしたい、好きだって言いたい女が出来たんだ。



「それが、A。」



黙って俺の話を聞いていたAの目が、少しだけ大きく開いた。

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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時

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