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再び店内へ戻って、お互い食べたい物をカゴに入れていく。
今日は酒はなしだ。
酔った勢いで、なんて絶対に嫌だから。
「3000円も買い物するお客さんあんまりいないんですよ。」
「2人分だからそれくらい普通じゃねーの?」
後で返すからレシートは受け取って欲しいと言うAちゃんの言葉を無視して、スマホで決済をする。
当然レシートは捨ててやった。
「ああ、もう…。」
「行こうぜ。腹減った。」
納得がいかなそうなAちゃんの手を引き、コンビニを後にする。
「手ェ冷た。」
「竜胆さんはあったかいです。」
手を繋いだことに対して何も言われなくて安堵した。
嫌がっている様子もないし、驚いている様子でもない。
全く気にしていないのだとしたら、それはそれでちょっとショックなんだけど。
そんな俺の心境には気付かないAちゃんが鍵を開けてドアノブを捻る。
「竜胆さん、入らないんですか?」
「本当にいいんだな?家に男上げるって、意味分かってやってる?」
読み取れないいつもの無表情で、そっと口を開いた。
「竜胆さんなら大丈夫です。」
「何で俺ならいいわけ?俺も男だけど。」
「竜胆さんは私が嫌がることはしないと信じているので。」
どうぞ、先に部屋へと上がっていったAちゃんがいつも通りの生活を始める。
男だと意識されていないようで、胸の奥がちくりと痛んだ。
少し悲しいような、悔しいような。だが、この程度で折れるわけにはいかない。
兄ちゃんなんて一目惚れしたその日に「嫁になれ」と言って、「いやです」と返されていたのだ。
それに比べたら、この程度。
俺は負けず嫌いだから、覚悟しておけよ。
部屋に上がると綺麗に片付けられた、いかにも女の部屋って感じだった。
女の部屋に入ったことないから知らないけど。
部屋の奥にあるベッドには、昨日取ってやったうさぎが乗せられていた。
その視線に気付いたAちゃんが口を開く。
「一緒に寝てます。ずっと大事にしますね。」
そう言って、嬉しそうに笑ってうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。
「可愛いな。」
「うさぎ、可愛いです。」
俺から貰ったからか、そうじゃないのか。
一緒に眠るくらい大事にしてくれているのなら、プレゼントして正解だったと嬉しくなる。
「なあ、名前呼び捨てにしてもいい?」
「好きに呼んでください。」
「A、」
今、好きだって言ったら、どんな顔するんだろう。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時