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19時45分、コンビニ前に到着。
あくまで自然を装って。
そう意識すればするほど、少し緊張している自分がいた。
いやほんと、中坊じゃねーんだから…。
意を決して店内に入れば、客は1人だけ。
「いらっしゃいませ、こんばん…わぁ…?」
「よ。」
レジの近くで作業していたAちゃんがお決まりの挨拶をしながら顔を上げる。
驚いたように語尾が変わるのが面白くて、つい吹き出して笑ってしまった。
「顔、見に来たぜ。」
「昨日見たじゃないですか。」
それはそうだけど、
「毎日見てえの。」
そんな本音が、つい漏れる。
付き合ってもないのに、何言ってんだろう。
先走りすぎたかもなんて後悔したが、視界の端に映るAちゃんは少し顔が赤くなっていた。
「…からかうの、ダメです…!」
そう言って、バックルームに逃げられた。
ごめん。でも、その反応はずるい。
期待してしまうから、そんな顔をするのはダメだって。
20時まで、残り5分。
取り残された俺と、気まずそうにレジに立つ店員。
とりあえず、飲み物でも買うか。
レジの真横にあるホットドリンクのケースを眺めて、コーヒーを1本手に取る。
Aちゃんは何がいいのだろうか、迷う手が宙を舞う。
「ココア飲みたいです。」
背後から声を掛けられ、肩がびくりと跳ねる。
「ッ!いたのかよ…びびった。」
「からかわれたお返しです。」
べ、と舌を出したAちゃんが事務所へと消えて行った。
何だよそれ、可愛いことしやがって。
絶対、俺の女にする。絶対、好きにさせてみせる。
そう決意して、缶コーヒーとココアをレジに置いた。
外に出てすぐ近くにある手すりに座る。
少し熱を持った頬にひんやりした空気は気持ち良かった。
「竜胆さん、お待たせしました。」
「お疲れ。」
まだ温かいココアを手渡す。
「ありがとうございます。はい、これ。」
差し出された手には100円玉が2枚。
金ならいらないし、そんなつもりじゃないからと、包み込むように手を握った。
「土曜日、楽しませてくれんだろ?それでいいから。」
「…ごちそうさまです。」
ふんわりと、Aちゃんが微笑む。
そうだよ。それが見たかったんだ。
「腹減ってねえ?家に飯あんの?」
「ないです。買って帰ろうかなって。」
「俺も飯まだ。」
「じゃあうちで食べましょうか。」
夜に男を家に上げるなんて、分かって言っているのだろうか。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時