四天宝寺のお約束part2 (ページ37)

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process86.希望と絶望の丘ページ37

いわゆる希望と絶望というものは
常に表裏一体でそれ以上も以下もなくて。

＊

四天宝寺にはちょっとした名所がある。いわゆるパワースポットというやつだ。駅を通り過ぎて寂れた商店街を奥まで進むと山の入口に着く。そこを頂上まで登っていくと小高い公園のような場所にでる。通称・希望の丘だ。

「希望の丘？絶望じゃなか？」

「表向きには、ね。昔からある話なんだけど、そこの希望の丘っていう所ではね、綺麗な日の出が見ることが出来るんだって。」

「へぇ～日の出が…」

「そこって雲に隠れたりして日の出が見ることが出来ないのが多いらしくて。でもね、もしその場所で日の出が見ることが出来たら…」

言葉を止めたAを千歳が不思議そうに見る。

「叶うんだって、たったひとつだけ願いが」

＊

12月31日午後１０時

「あんなぁ千歳。…お前って相当天然やんな」

「俺を誉めても何も出んよ？」

「いや誉めてないわ。むしろ貶してる。」

「なんでこんな日に、というかこんな時間に呼び出されんねん。しかもお前に。」

「理由なんて無きにしもあらずってやつばい」

「アホか。振り回される側の気にもなってみぃ」

「せや、謙也さん死ね」

「ざーいぜん、お前あと数時間で今年が終わろうかしてる時に死ね言われた人がどんな風に感じるか考えたことありまして？」

「喜ぶんとちゃいます？」

「どないなドＭやねんそれ。ってオレかい」

真っ白い息を吐きながら駅前でそんなコント調の会話を繰り広げる若者達の姿があった。
ただ気掛かりなのは、事の発端である少女の姿が見えないことだけだろうか。

「で、悠木は？アイツなんでおらんの？」

「さぁ…小石川副部長もおりませんけど」

「悠木ちゃんと小石川は金ちゃん誘って初詣行く言うてたで」

「…白石遅かー」

「すまんすまん。家出てくる時妹から誰と何処に行くんやって問い詰められてなぁ」

「うむ…申し訳ない皆はん」

「師範まで来たんすか？なんやえらい年長組ばっかり集まってますやんか。オレ帰ってもええですか？」

「帰りたかったら帰り財前。その代わり来年の話題に自分一人ついていかれへんくなっても知らんけどな。」

「…ハァー」

「…なんや意外とお前寂しがりやな一人好きやったりするんやな」

「うっさい謙也さん死ね」