process83.記憶邂逅 ページ34
かつてのテニス部にはある目標があった。
全国制覇、出来なかったけれど。
どんなに強く願ってもどんなに手を伸ばしても
もう二度と届かない場所
悔しかった筈だ。
泣きたい程に。心が壊れてしまいそうな程に。
どれだけ欲しても届かなかった。
あの日、彼らは誰ひとりとして涙を見せることは無かった。
そんな彼らに、私はなんの言葉もかけることが出来なかったよね。
泣いている私の頭をみんな、そっと撫でてくれて、本当は、誰よりも悔しい筈なのに。
『違う。本当に悲しいのはあなたたちじゃないか』喉元までそんな言葉が出かかっていた。
運命となんて残酷なのだろう。
「苦しいね」
「…まだ気にしてたんか?」
「…まさか」
「何度も言うたやろ。俺達は負けた。それが全てや。どんなに素晴らしい試合したかて全てその言葉で括られてまうんや」
「…でも謙也くん…本当は試合出たかったんじゃないの?本当は…誰よりも悔しかったんじゃないの?」
「アホか。言うたやろ強いやつが試合に出るんわ当たり前ってな。千歳は、アイツはオレよりも強い。そしてアイツは負けた。アイツでも勝てんかった相手にオレが勝てた筈も無いやろ」
「そうだけど…」
「結局は結果が全てや。でもな、千歳、楽しそうやったやろ?」
「?」
「楽しんでプレー出来たら…それだけええとオレは思う。だって結局テニスは楽しんだモン勝ちやねんからな!」
ま、負けんのは嫌やけどな、と少し悲しそうに謙也くんは笑う。
神の子は負けた。
それは『テニスを楽しむ』という気持ちを忘れてしまっていたから。
結局どんなことも、楽しまなきゃ意味ないんだとあの試合は教えてくれたんだ。
「せやからオレ達は負けた。けど、決してテニスを嫌いになることなんて無い。いや、なれるはずなんか無いんや。」
そうだ
テニスを
嫌いになれるはずなんて無いんだ。
あんなに手を伸ばし続けたのに
届くことはなかったとしても。
「私さ、ずっと考えたてたんだ。
どんなに手を伸ばしても届かないと分かっていながらも追い求め続けるのと、最初から手が届く場所にいて全てが退屈だと感じるのと、どっちがいいんだろうって」
「そんなもん…最初っから負けるつもりで試合に臨むヤツなんか1人もおらへんわ」
「…そっか」
私が見守り続けた彼らの夢は
途中で途絶えてしまったけれども。
本当に大切なことを心に灯し続けた彼らは
とても幸せだったんだと私は思う。
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皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - めっちゃおもろい(*≧∀≦*)(´∇`) (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - 本気と書いてマジと読む。ですね( ☆∀☆)www (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» あ〜、だんだんとねwwww (2014年8月7日 23時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - クルエルさん» クライマックスで、だけどww最初はギャグだわww (2014年8月7日 22時) (レス) id: 5b35e72707 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» マジか!ドンと来い!!← (2014年8月7日 22時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2014年8月6日 23時