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process68.追憶の彼方へ ページ19

ぽたり、ぽたりと頬に冷たい雫が落ちる。


雨は止みそうにもない。


「猫はね、待ってたんだよ」


「…………………」



「猫には見えてたんだよ。ご主人の姿が」



だからずっと、この猫は待ってたんだ。


たとえ誰かを抱き締める腕が無くなっても


そばに歩み寄る足が無くなっても



もう誰かを温める体温が無くなっても



それでもこの猫の下に帰ってくるご主人のことを



ずっと待ってたんだよ。





そっと石碑に触れる。


「この石碑はきっと目印でもあったんだよ。猫の下に帰ってくるときに、迷子にならないようにって」



死して尚 魂はここに在る。





「だから…ここで死なせてあげよう」


金太郎の手をそっと握る。


冷たくて、そして温かな手だ。




「ご主人と最後に過ごしたこの場所で
ちくわ丸を死なせてあげよう」



もうちくわ丸は離ればなれなんて嫌なんだ。





だから いつもいつもここに居たんだ。



「…姉…ちゃん」


「…ん?」


優しく微笑む。



「…ちくわ丸寒そう…やな?ひっく…寒い思いなんてひっくさせたあかんよ…な?」


「…そうだね。ちくわ丸に寒い思いなんてさせないよ」


白石が傘をちくわ丸の上に掲げた。



ほんの少しだけちくわ丸の表情が和らいだ気がする。



そぉっとちくわ丸の背中を撫でる。




あぁ、もうすぐ雨は止みそうだ。



*********


『猫 猫 生きてるか?


もう 溺れるんじゃないぞ


じゃないと



もう俺はお前を助けることは出来そうに無いんだから



俺は今まで後悔ばかりしながら生きてきた


誰かを傷付け 自分を傷付け


自分を偽って 哀しくなって


ひとりぼっちになった


でもそんな時 お前に出逢ったんだ

小さくも必死に生きようとしているお前を見て俺は一体何をしているんだろうと思った


何の為に生きているんだろうと思った


そして今も


その理由は分からない


でもな
こんな俺にもたった一つの願いが出来たんだ


どうせ後悔しながら生きていくなら



最期くらいはせめて後悔せずに……




なぁ 猫


お前はこんな俺と出逢って幸せだったか?



俺は





とても幸せだったよ









一緒に生きてくれて ありがとう。」

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設定タグ:テニプリ , ギャグ , シリアス   
作品ジャンル:ギャグ
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皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - めっちゃおもろい(*≧∀≦*)(´∇`) (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - 本気と書いてマジと読む。ですね( ☆∀☆)www (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» あ〜、だんだんとねwwww (2014年8月7日 23時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - クルエルさん» クライマックスで、だけどww最初はギャグだわww (2014年8月7日 22時) (レス) id: 5b35e72707 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» マジか!ドンと来い!!← (2014年8月7日 22時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆう | 作成日時:2014年8月6日 23時

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