process65.祈りの碑 ページ16
『それとも…何?』
『…いやオレな、ちょっと聞いたことあるんやけどあの河川敷って…石碑が建ってるやろ?』
『そういえば…前に来たとき見覚えがあるような…』
『そう、その碑はな何年か前に溺れた猫を助けて亡くなった人の為に建てられたものやねん』
『猫…って』
『もう分かるやろ。その猫は…』
********
「つまりそういうことや。石碑を建てられた人はあの猫の本当の飼い主やったんや。」
駆け付けて来た白石に謙也は焦り気味に説明をする。
本音を言えばA達と共に動物病院へ向かいたかったのだが、風邪気味の財前を置いていく訳にもいかず実質のお留守番状態なのだ。
「河川敷で拾ったって聞いた時から嫌な予感はしててんけど…まさかあの猫やったとは」
「あの猫、飼い主が亡くなってから建てられた石碑の前からずっと動かへんかったらしいねん。それを近所の人が心配していろいろ世話されてたらしいねんけど…」
「その時からやってんな。毎年あの河川敷で人がなくなってるのは。」
「せや。毎年この季節になると大雨であの川が増水して…石碑の前にいた猫が溺れてるのを近所の人が発見して救助しようとしたらしいんやけど」
「…あの猫は助かっても結局助けようとした人は皆、命を落としてしもたんやな…」
白石の顔が曇る。
「せやからオレは言うたんすわ。あの猫は疫病神やって。あの猫を助けようとした人は皆死んでまう。」
財前も珍しく真剣な表情で呟く。
「ひとつ疑問が残るとすれば…」
財前は静かに窓の外を見つめる。
大粒の雨が窓を叩いていた。
「なんで遠山は助かったんでしょうね」
*********
「祈りは届かなかったのかな…」
「…ん?」
Aが独り言のようにボソッと呟いた。
「あの碑は…『もう二度と同じ過ちが繰り返されないように』って願いが込められて建てられた筈なのに…」
小石川はAの言葉にギリ、と手を強く握り締める。
やりきれない想いだけが、心の中を渦巻く。
「…祈りは届かなかったんだ…」
その時
バタバタバタッ
「ちょっとちょっと君たち!」
子猫を診てくれた獣医さんが部屋から飛び出して来た。
「…どうかしたんですか?」
異常に気付いたのか、俯いていた小石川と金太郎も顔を上げた。
「ゲージに入れてた筈の子猫が…突然消えてて…!」
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皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - めっちゃおもろい(*≧∀≦*)(´∇`) (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
皆を騙す詐欺(ぺてん)師 - 本気と書いてマジと読む。ですね( ☆∀☆)www (2018年1月23日 16時) (レス) id: 237e1b1da0 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» あ〜、だんだんとねwwww (2014年8月7日 23時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - クルエルさん» クライマックスで、だけどww最初はギャグだわww (2014年8月7日 22時) (レス) id: 5b35e72707 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - ゆうさん» マジか!ドンと来い!!← (2014年8月7日 22時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2014年8月6日 23時