隣の君は。

隣 .44 ページ44

観覧車はすぐに動き出したけど。





『 平野くん、ごめんね？
もう大丈夫だから 』


平野くんはなかなか離してくれなくて。



何も言わないし、顔も見えないから
彼が何考えてるか分からない。




『 ねえ、平野くん？ 』


もう一度名前を呼ぶと
ハッとして私から離れた。




紫「 ご、ごめん！ぼーっとしてた… 」


『 大丈夫？ 』


紫「 見んな！ 」



心配になって顔を覗き込んだら
勢いよく目を逸らされて、胸が痛んだ。




紫「 ご、ごめん… 」


『 どうしたの？ 』




何でもない、って言うけど
明らかにさっきと様子が違う平野くん。



急に静まり返ったゴンドラ内、
何を話せばいいか分からなくて

私も平野くんから目を逸らして
外の景色を眺めていた時。




『 あ、てっぺんだ 』


気付けばもう頂上で
平野くんと2人きりの時間も
あと少しで終わってしまう。





『 ねえ、さっき、観覧車が止まる前、
なんて言おうとしてたの？ 』


勇気を振り絞って出したその言葉に
ようやく平野くんの視線がこちらに向いた。




黙り込んだまま見つめ合うのが恥ずかしくて
目を逸らそうとしたその瞬間。






紫「 岸くんのこと、好きなんでしょ？ 」


顎をクイッと持ち上げられて
強制的に交わった視線は、

鋭く私の瞳に突き刺さった。

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