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渡されたジャージからは岸がいつもほのかに纏っている石鹸の香りがする。
いつもなら何とも思わなかったのに、
今日は心臓が煩く鳴っている。
着てしまうと何かが変わってしまいそうで躊躇してしまう。
「何だよ、ちゃんと洗ってあるよ」
『や、分かってるけど、そうじゃなくて、なんか』
「なんか？」
『なんか、本当ごめん』
「なんだよ(笑)」
岸は私が何に対して謝ったのか分かっていない様子だった。
透けていることに気づいたからには岸のジャージを着ないわけにはいかない。
思い切って着てみると想像よりも少し大きかった。
「幼稚園児みたいでいーじゃん」
『いーわけないじゃん』
「ははっ、可愛い可愛い(笑)」
『ムカつく』
ムカつく。岸のくせに。
岸が好きだ。
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作者名：あさひ | 作成日時：2021年1月7日 1時
