プリムラ (ページ33)

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1限が始まる前に教科書とノートを机の上に準備していると、
奈子が私の名前を連呼しながら走ってきた。
手には2体のてるてる坊主が握られていた。
担任に言われた通りに外してくれたらしい。優しい。

「何これ超きっしょいんですけど！！！」

『それ岸作だよ』

「外して顔見てやったらあまりのキモさに思わずヒッ！って言っちゃったよ！
岸くん画力ひっっどいね！！」

容赦ないディスに笑いが止まらない。

「捨てると呪われそうだからA捨てといて」

『分かった(笑)外してくれてありがとう(笑)』

「岸くん何て恐ろしいものを生み出すんだ‥‥‥」

奈子が静かに自分の席に帰っていくと、
机の上に寝ている再びてるてる坊主に目を落とす。

何度見てもひどい。
でも雨が上がったのはこの子たちのお陰もあるかも。
捨てる前に写真撮っておこう。

そうだ、岸にも送ろう。

先週初めて岸からLINEが来た。
どうやらクラスのグループから勝手に追加してきたらしい。
内容はその日の化学の授業寝ちゃったから明日プリントうつさせてくれ、とそれだけ。
いいよと送ったきり返信が返ってくることはなかった。

あの日ぶりに岸とのトーク画面を開いて、
写真を送った。
"晴れたね"と一言添えて。

岸から返信が来たのは、
私たちが昼食を食べ終わったころだった。