プリムラ (ページ31)

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「明日仕事なんだけどさー、この雨ちゃんと止むかなぁ」

『どーだろ。予報では午前中までってなってたけど』

「マジ？家出る時には止んでて欲しいなー」

『だね～』

教室を見回すと、前方の棚の上にティッシュが乗っている。

『あ』

「ん？」

早歩きで取りに行き岸の方を振り返る。

『てるてる坊主作ろう！明日晴れるように！』

「小学生かよ！」

『うるさいな』

突っ込んできた割に岸は意外とノリノリでティッシュを手にした。
私が持っていた使い捨ての髪ゴムで首を括って、
各々ペンで顔を描いてあげる。

私はシンプルににっこりと笑ったてるてる坊主にしたけど、岸は

『何それ』

「ドラえもん」

『百歩譲ってこれはドラえもんだとして、
いや本当は全然似てないから譲りたくないけど、
てるてる坊主の顔にドラえもん描くやついる？』

「はぁ？！丸い顔といえばドラえもんだし、
どっからどうみてもドラえもんじゃん！」

どっからどう見ても夜道では絶対に遭遇したくない妖怪だ。

岸の絵を見るのは２回目だけど、
圧倒的な画伯っぷりに感動すら覚える。

『まあいいや、貼っとこ』

セロハンテープで窓に私のてるてる坊主と
岸のてるてる坊主(仮)を並べて貼り付ける。

「おー、明日晴れそうな気がして来た！」

『お願いしとこう』

そう言うと岸は手を合わせて目を瞑った。
結構本気でお願いしている岸を見て吹き出しそうになったけど、
私も手を合わせて目を瞑る。

「長くね？！何願ってんの？世界平和？」

『違うわ！岸がお仕事上手くいきますようにって！』

「え、Aいい奴かよ！頑張るわ！さんきゅーな！」

今日も眩しいな岸の笑顔。

その後岸はプリントを提出しに行くから先に帰っていいよと私に言った。

私は岸が帰ってくるのを待つ事なく、
傘をさして1人で下校した。