プリムラ (ページ30)

今日:2 hit、昨日:10 hit、合計:99,937 hit

･ページ30

.

帰りのHR後
奈子はすぐに佐野くんの元へと向かい、
私はこれといって用事もなく、
かと言って雨足の強くなった中を帰りたくもなくて
図書室に行って時間を潰した。

特に読みたい本のない私はぷらぷらと教室内を散策したあと昔読んで面白かった小説を流しながら読んだ。

1時間ほど経っても雨足が弱まる気配は無く仕方なく帰ろうと思ったけど、
図書室から昇降口に向かう途中の渡り廊下で自分の教室にだけ電気がついているのに気付き引き寄せられるように教室へ向かった。

教室前方のドアを開けて顔だけ覗かせると、
大袈裟に驚く岸がいた。

「わ！びびった！Aか～！まだ帰ってなかったんだ！」

『図書室いた。岸こそこんな時間まで何してるの？』

「居残り！明日学校休むから！
英語は前もってプリント渡してくれんの、俺だけ特別措置！内緒な！」

どれどれ、と覗き込むと
次の日習う予定であろう英単語や要点がまとめられ、
練習問題までついている。
岸はもう解き終わっていた。

『へ～、あの先生親切だね』

「な、ありがたいよ」

『終わってるのに帰んないの？』

「雨すげーじゃん。やだなーって見てた」

数秒の沈黙。
岸は窓の外をじっとみている。

『ずっと不思議だったんだけど、何でここに入学したの？大変でしょ』

「んー？普通に高校生活も楽しみたいって思って！」

大変だけど嫌じゃないよ～、と。

『‥‥‥楽しめてる？』

「おー！お陰様でな！」

『それは何より』

「おー」

静かな教室に雨音だけが響いている。
岸と2人きりになるのは初めてだけど、別に居心地が悪い感じはしない。