プリムラ (ページ29)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:99,926 hit

･ページ29

.

それから10分程して岸も登校して来た。
傘をさして来ただろうに何故か前髪が少し濡れていて岸らしさを感じる。

「おっ今日はAのが早えんだ！おはよ！」

『おはよ～何で前髪濡れてんの？』

「え濡れてる？マジか！気づかなかったわ！」

予想を裏切らない岸の岸らしさ‥‥‥

「タオル使ってる？ちょっと貸してくんね？」

『いいよ、はい』

「あざっす！」

わしゃわしゃと前髪を拭く岸はまるで犬のよう。

『それカバン拭いたけどね』

「は？！早く言えよ！はー！まいっか！洗って返すわ！」

『いや流石にいいよ』

「いーっていーって！」

今日も岸は律儀だ。

「うお、ブレザーも結構濡れてんな」

『ねえ何したらそんなに濡れるの？』

「普通に歩ってるだけなんだけどなー」

ブレザーを脱ぐと岸もカーディガンを着て来ていた。

『あ、ほんとだ』

「え？何が？」

『あいや、何でもない』

「変なやつ！」

『岸だけには言われたくない』

「は！何でだよ！」

『フッ』

いつか奈子が言っていた通り、
黒のカーディガンだ。

風のように教室から走り去って岸のカーディガンの色を確認しに行った奈子を思い出し、
懐かしくて笑ってしまった。