Primula

31 side重岡 ページ31

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「もー泣かんでって。俺が泣かせたみたいやん」
「ごーめーんー！せやけど、ラスト…」
「…また泣く、」



予想外に映画のラストが切なくて、涙がとまらないらしい。
一度止まっても、思い出しては涙ぐんでいる。



「とりあえずここ、入ろか」

ポンと頭に手をおけば、こくんと頷いた。






「涙止まった？」
「おん。ごめん」
「涙もろいんやな。もっとクールに見えてた」
「私、そんな感じなん？」

なんでも卒なくこなせるタイプのくせに自覚はないらしい。
きょとん、とした顔でカフェモカに口をつけた。






「…高校でさ、」
何か考えていたような彼女が口を開く。



「私、高校でやりたいことなくて
…ほんまはピアニスト目指しててん」
「そう、なん」
「おん。高校も音楽専攻できるとこいくつもりやってん。
でも、事故にあって…指、思うように動かんくなって、
そんで何となく高校進学して、せやからクールに見えたんかな」

そんな話は初めてで、言葉につまる。






「せやけど、」



それまで手元ばかりを見ていた彼女が顔をあげて
初めて目があった。



「しげが隣の席で思ったより毎日楽しかったで」






ずっと言いたかったんやー、なんて照れたように笑う。






もう、限界やった。
好きがあふれてしまいそうで

限界やった。

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