Prisonerworld【小説】 (ページ17)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:8,145 hit

未熟【守】【一颯】ページ17

結局俺は、ハンマーの如く硬化した手でレボディショナルの総領の顔面を不意打ちで一発ぶん殴ってから逃げ帰った。流石に敵がいっぱい良すぎて、一発殴るのが限度だったから。

今は若干戦況が落ち着いて、俺はシェルターの外で見張り番をしている。空は既に真っ暗どころか、夜明けが来ているのか、空はちょっと明るくなりかけていた。

「ふぁ…ねみ…。腹減った…。
…チェックワンツーワンツー…ガーディアで今起きてる人～シェルターの外で健気に見張りをしてる俺にご飯を恵んで下さ～い…」

無理矢理シェルター内で休んでる人を起こす訳にはいかないので、通信機に向かって小声でそう呟く。
ぐいっと体を伸ばし、四温、今どうしてるかな～、とか考えてみる。いきなり現れて総領を殴られて逃げ帰って、びっくりしただろうか。びっくりしただろうな。今度詫びに行こう。
冷たい風が頬を掠って体を冷やす。少しでも暖かくならないだろうか、と考えて髪を解いてみたけど、結局寒さは変わらなかった。今回の戦闘が終わったらぐっすり寝させてもらおう。そして暖かい布団で自堕落な生活をするのもまた一興だろう。

唐突に、がた、と背後で音がして振り返る。勿論それは敵なんかじゃなく、見張りを続ける健気な俺にご飯を持って来てくれた優しい仲間だった。

「七奈ちゃん、ご飯持って来てくれたの？ありがとう！」
「うん、まあ起きてたから…それにしても颯君、疲れたでしょ、そろそろ変わろうか？」

ご飯を差し出されながら七奈ちゃんは心配そうに俺を見るが、その提案は受け入れられなかった。
俺は軽く首を横に振ると、口を開く。

「ううん、ダメだよ。湊が帰って来た時は、俺が迎えてやらなきゃ。」
「…でも、顔色もすごい悪いし、倒れちゃうよ」
「心配してくれてありがとう、でも七奈ちゃんがご飯持って来てくれたからまだ大丈夫だよ。」
「でも…」

七奈ちゃんを心配させない様に微笑むけど、七奈ちゃんは変わらず心配そうな顔をしていた。
あぁ、心配させちゃうなんて、俺もまだまだだよなぁ。
一口、また一口とご飯を口に運ぶ俺と七奈ちゃんの間に、微妙な空気が流れる。
ご馳走様でした、と言って手を合わせると、七奈ちゃんに向き直り、もう一度ニッと微笑んで言ってみせる。

「それじゃ、俺が倒れても大丈夫な様に、一緒に見張りしてよ。
それで、一緒に湊を迎えてあげよう？」
「…うん。」

未だ心配そうな顔をした七奈ちゃんは、俺の隣に座った。
…ほんと、俺もまだまだだなぁ。