マイナス思考 【守】【荒川瑠架】 ページ8
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スゥッと、頬を冷たい汗が伝う。
ガーディアのシェルターに戻るには戦場を突っ切らなくちゃいけねぇ。迂回するにしても、身を隠す場所は見当たらない。黙って見逃がしてくれるほどレボディショナルの連中は甘くないだろう。
能力の飛び交うあの戦場を突っ切るなんて、アタシに出来るか?
指揮する奴がいないのか、今あそこは敵味方入り混じった混戦状態に陥っている。あんなところに突っ込んで行って無事で済むとは思えない。
空気の密度を小さくしてあそこの奴ら全員戦闘不能にする? いや、それだとガーディアの奴らも巻き込んじまう。じゃあ、空気の層を盾にして突っ込む? でもあたしの能力って割と不安定なんだよな……途中で効果が切れちまったら……。
___あぁ、まったく!
「なんだよアタシ。さっきからダメな理由ばっか探してるじゃねぇか」
何でかは分かってる。
アタシは、死にたくないんだ。
アタシはあそこを突っ切れるほど強くない。なにより、自分の能力を信じきれてない。
使うといつもぶっ倒れて終わる。そんな能力、誰が信じられるかってんだ。
はぁ、と一つ溜息を吐く。
突っ切るのは悪手。今のアタシにゃ無理だ、メンタルのコンディションが最悪すぎる。ここに留まるのもよくない。かといってレボディショナルのシェルターを攻めるのも一人じゃあ無理___
そこまで考えた所で、気配を感じて向こうの木の影に目を遣ると。
見覚えのある髪形を発見した。
あのおかっぱ頭、それにあの大鎌……たしか斥候部隊のミナトとかいう奴だ。
アイツ、あんなところでなにしてんだ? 偵察か?
見ていると、ミナトは何か逡巡するように様子をうかがっている。
その目線の先を追うと、少し先の地面になにか四角い穴のようなものが見え、た……ってぇ!
「(あれ、四角い穴っていうかもろレボディショナルのシェルターの出入り口じゃねぇかよ! 近いっつっても近すぎるだろ! てか馬鹿かアタシは、すぐに気付けよ!)」
あまりに衝撃的な発見に思わず固まっていると、「よしっ」と何とも軽い口調の独り言が聞こえた。見ると、ミナトが今にも木の影から飛び出さんとしているところだった。
「(いやいやいや、突入するってのか? たった一人で?)」
馬鹿じゃねぇか、と思った。命を粗末にするな、とも。
それと同時に、アタシは自分でも意識しないまま走り出し、ミナトの肩を掴んで言った。
「待って、一緒に行こう」
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白 - 更新しました! (2020年3月1日 18時) (レス) id: a0941ce1f9 (このIDを非表示/違反報告)
白 - お久しぶりです。更新しまーす! (2020年3月1日 17時) (レス) id: a0941ce1f9 (このIDを非表示/違反報告)
しじみごはん(プロフ) - 更新しましたーー!!! (2020年2月23日 11時) (レス) id: a2f3698a22 (このIDを非表示/違反報告)
しじみごはん(プロフ) - 更新します〜〜 (2020年2月23日 10時) (レス) id: a2f3698a22 (このIDを非表示/違反報告)
星蝶 - 更新しました! (2020年2月11日 22時) (レス) id: 6888f46f20 (このIDを非表示/違反報告)
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