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仁王雅治と海に溶け込む ページ2

※かなり暗めな話です


「………………」

「………………」

自分から呼び出したくせに、彼は一言も喋らない

かと言って私も何も言わない

言葉を発してしまえば、「その時」がすぐやってくるような気がして。そして彼がそれを怖がっているような気がして









「一緒に死んでくれんかのう」

今朝のことだった

珍しいことに彼から電話がかかってきたのは。


「え?」

「今夜」

「……本気…で、言ってる…?」

「…今夜。海で待っとるから」

それっきり、彼とは連絡がつかなかった

どこの海とも、何時ともはっきりしなかったけれど、長年、彼と付き合ってきたせいで、だいたいわかってしまった


多分。彼は。

気づいてしまったんだと思う

いや、気づいてはいた。互いに。でもそれを見て見ぬふりをしていた

私はあなたが一緒なら別に勘当したっていいと言ったのに。

彼はそうではないのか、と悲しくなった

でも一緒に死ねるなら、それも本望だ、と思う

我儘を言うなら、彼がお爺さんになって、私がお婆さんになってからが、良かったけれど。

私はあなたが最期の相手に私を選んでくれたことだけで幸せだ


「行こう。明るくなっちゃうよ」

沈黙が怖くなって彼に言った

今まで見ないようにしていた彼の顔を見る


…なんで…仁王がそんな顔するの…


彼は、酷く悲しそうな顔をしていた

死にたいと言ったのは自分のくせに。


「どうしたの?はやく行こう」

にこりと彼に微笑む

彼はちっとも笑わない

…ねえ。笑ってよ。あなたのそんな顔が見たかったわけじゃないのに


「仁王?はやく行っ」

瞬間、強く抱きしめられた

びっくりした。今まで一度だって彼から抱きしめてくれたことなんてなかったから

「に…おう?」

「もう…」

「え?」

「もういいんじゃ」

ああ、どうして

「おまんが死ぬ方が恐ろしい」


今までその選択肢を挙げたことなんてなかったのに


「別れよう」


死のうと思っても出なかった涙は、そのたった5文字で簡単に出た

本当はこのまま駆け落ちでもしてしまいたい

でも、彼がそれを望まないなら


「…うん。さようなら…仁王…」

財前光は素直になれない(1/2)(★)→←ご挨拶とご注意



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設定タグ:テニスの王子様 , テニプリ , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:あぷりこっと☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/apricotstar/  
作成日時:2019年9月7日 2時

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