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全体を包み込むような体躯にちょっとだけ甘い爽やかな香水の匂い。
間違えるはずない、居るはずのない人に私は動揺を隠せないでいた。
「な、んで…ラウールが…」
「捜したに決まってるでしょ」
少しだけ怒ったような声色が上から降ってくる。
「何で黙って出て行っちゃうの?何で俺を…置いていったの」
「え…」
「Aさんが色々考えた行動なのかもしれないけどさ、俺だって色々考えたんだよ?なのに勝手に出て行っちゃうなんて…」
私を包む腕に力を込めてラウールは言葉を続ける。
「どうしたらAさんを傷付けずに済むか、周りに迷惑をかけずに済むか。Aさんもきっと似た事考えたんだよね?」
ラウールの言葉は合っていたから素直に頷いた。
「でも、俺はまだ子供だからAさんが黙って居なくなるのを許すなんて無理」
ラウールは少しだけ体を離すとくるりと私を回して向き合わせた。
思わず見上げれば少しだけ眉を潜めた、でもとても真剣な表情を浮かべていた。
「ワガママかもしれないけど、Aさんも大事だしメンバーの皆も大事。全員を悲しませたくない」
そう語るラウールの目は決意に満ち溢れていた。
「1人で完結しないで、話し合おう?俺達が幸せになれる方法」
ラウールは大きな掌をそっと私の頬に添えた。
「Aさんは俺が嫌い?」
「嫌いな訳ないっ!」
思わず反射的に否定したらラウールはニッコリと微笑んだ。
「Aさんが好き、恋愛対象として大好き。だから俺を諦めないで」
「ラウール…でも…」
「でもじゃなくて、返事が欲しい。Aさんの素直な答え」
真っ直ぐに見つめてくるラウールに私は嘘を付きたくなかったから。
「ラウールが好き。甘えん坊な所も拗ねて子供みたいな所も急に大人びる所も、全部が大好き」
今自分が出来るだろう1番の笑顔を浮かべてそう答えを告げれば、ラウールも満面の笑みを浮かべてもう一度私を抱き締めた。
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作者名:氷那 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HAK/
作成日時:2022年6月9日 3時