恋人はママちゃん２【白】 (ページ7)

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ー【貴女 side】ページ7

数日前からトランクルームに荷物を運んで、今朝置き手紙をしてマンションを後にした。

皆の顔を見たら決心が鈍りそうだったから、誰にも言わずに出て来た。

契約担当の方とカフェで会って挨拶をしたら、スノの皆さんも信頼してましたしいつでも戻って来てくださいと優しい言葉を頂いた。

担当の方と別れて、さっさとこの街を離れればいいものを。

離れ難い気持ちが強くて無駄に車で街中を回り、気付けばあの高台に来ていた。

車を停めてゆっくりとした足取りで階段を登る。

ラウールと夜に来て以来、一度も１人では来て居ない。

あの時は夜で危ないからって手を繋いで階段登ったっけ。

数分して高台の広場に到達して街を見渡せる場所に立つ。

『ねえねえ、この場所俺とAさんの秘密の場所にしない？』

子供っぽい笑顔でそう提案したラウールを思い出して甘くて切ない気持ちが胸に湧き上がる。

普段は凄く子供っぽくて甘えてくるのに時々物凄く大人な表情もして。

気付いたらその二面性に強く惹かれてしまっていた。

「私が三次元に沼るなんてなぁ」

でもあんな可愛い子に甘えられたら誰だって心許しちゃうよね。

皆の期待に応えようと学業も仕事も真剣に取り組む真面目な子。

そんな未来あるラウールの邪魔を私みたいな一介の家政婦ごときがしてはいけないから。

直ぐには消せないこの気持ちは蓋をして心の奥底に沈めよう。

それでも…今ここに居る間だけは思い出に浸るのを許して欲しいな。

目を閉じればあの日のラウールがはっきりと思い出せる。

ううん、あの日だけじゃない。

出会ったばかりの頃の余所余所しいラウール、楽しそうに歓迎会を提案してくれたラウール。

泣いてしまった私を慰めようとしてくれた優しいラウール、心配そうに看病してくれたラウール。

どのラウールを思い出しても愛しさばかりが湧き上がってくる。

そんな優しいラウールだけど、黙って出てきた事を知ったら。

「流石にラウールも怒ってるかな…」

「うん、怒ってる」

思わず呟いていた言葉に対しての返事が聞こえて。

振り返る間も無く誰かに抱き締められた。