６話💐 ページ7
花吐き病と自覚してからは特に喉のケアに気を付けた。
あの日から１日１回は吐いてしまうし、小さいとは言え異物である花が喉を通るから正直喉の痛みも続く。
片思いを拗らせると言う言葉通りなのか、吐くのは必ずラウの事を考えてしまった後。
そう言う時は白い小さな花…春先に町中でも見かける、多分クローバー。
でもこれは比較的楽な部類。
厄介なのはラウが誰か…特にめめと居るのを見た時に吐く花。
燃えるような赤い花が溢れるように出てくる。
最初は１、２個だったのに日を追う毎に増えてるから、吐いた後はかなり体力を消耗する。
まあ、１回吐けばその日はそれ以降吐く事がないのがせめてもの救いかな。
なんて軽く考えていた罰が当たったんだろうか…。
「めめ〜」
「何だよ」
今日も今日とてラウはめめの隣に座り、その耳元に顔を寄せて楽しそうに内緒話をしている。
見たくはないけど視界に入ってしまう光景に胸が締め付けられる。
でももう今日は朝に１度吐いてるし大丈夫。
そう思いながらスマホ画面に視線を逃がしていた時だった。
「もう、めめのイジワルっ」
「はは、お前は可愛いな」
耳に届いた声に思わず視線を向ければ、頬を赤く染めたラウに優しく微笑みかけるめめの姿があった。
「仲良いね、ホント」
「せやね…ホント羨ましい位やわ、ね？ふっかさん」
「ん…そう…っ!?」
話し掛けてきた佐久間と康二に返そうとした言葉は込み上げてきた急激な吐き気によって遮られた。
「ごめん、トイレっ」
何か言いたげな２人にそう言い放つと俺は楽屋を飛び出しトイレへと駆け込んだ。
「がっ…かはっ…なん…ぐっ」
耐え切れずに吐き出す花は真っ赤で、あっという間に便器の中は赤に染まった。
「はぁ…っ、はぁ…何で、２回目…」
口元をペーパーで拭き取り、呆然と赤い花を見つめる。
今までは１回吐けば１日吐かなかったのに…悪化して来てるのか？
そんな不安に襲われて自分の体を抱きしめる。
「大丈夫、吐くだけ…」
俺は考えを消し去るように頭を振り、自分に言い聞かせた。
そんな中でも不自然な程に花は活き活きと咲き誇っているように見えた。
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