恋人はママちゃん【白】 (ページ37)

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『コンコン』

ラウールの部屋のドアを軽くノックして声を掛ける。

「ラウール、Aです。おやつ持って来たんだけど食べない？」

直ぐに返事が来るとは思っていないから取り敢えずは待ってみる。

……………聞こえてないかな？

今度はもう少しだけ強くノックする。

「Aさん特製プリンだよ、ちょっと食べてみない？」

努めて明るい声を掛けたらゆっくりとドアが開いた。

泣きそうな、でも怒ってもいるような初めて見る表情でラウールが立っていた。

「えっと、運んでいい？」

問い掛けに無言で頷くラウールに私は部屋の中に入り、軽く見渡して勉強机の開いたスペースにお盆を置いた。

次の瞬間、私はラウールに後ろから抱き締められていた。

「ラウール？」

「こんなかっこ悪い姿見せたくなかったのに、声聞いたらAさんの顔が見たくなった」

ぎゅっと私を抱き締める腕に力が篭る。

これは頼られてるって事でいいんだよね。

「ラウールはかっこ悪くないよ、私で良ければ聞いていい範囲で話聞くよ？」

そう言うと少しだけ腕の力が抜けた気がした。

「顔、見て話そうか」

その言葉にラウールは少しだけ身体を離したので私は振り返るとその高い顔を見上げた。

綺麗な顔を泣かないようにか歪めているのを見て、胸が痛んだ。

ラウールのこんな顔は見たくないな。

このままでは話辛いからラウールを椅子に座らせて私はその前に立った。

「言える範囲でいいから、話してくれる？」

「…うん」

聞けば収録中にテンションが上がったせいでゲストの方に失礼な事をしてしまったらしい。

その場は皆のフォローで笑いに変わった事で乗り切ったけど、後で謝りに行った時に注意をされた事。

結果的には許して貰えたけど、皆に迷惑を掛けてしまった事を悔やんでるみたい。

ポツリポツリと話してくれたラウールに私は少し考えて口を開いた。