恋人はママちゃん【白】 (ページ36)

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知らない感情【貴女 side】ページ36

最近皆さんは帰ってくるとキッチンに顔を覗かせて挨拶をしてくれる。

まるで家族みたいなやり取りに嬉しいやらくすぐったいやらで胸がほっこりする。

でも今日はいつも元気に顔を見せるラウールがキッチンに来なかった。

さっきふっかさんや照さん達と一緒に帰ってきたはずなんだけど…何かあったのかな？

ちょっと心配な気持ちになっていたら飲み物を取りに照さんがやってきた。

「照さん、ラウール何かあったの？」

「あ〜…ちょっとな」

私が尋ねると照さんは少し言いづらそうに答えてくれた。

「現場で失敗してさ、ちょっと怒られたけど相手も許してくれたし気にするなって言ったんだけどな」

結構落ち込んでるみたいで部屋に篭ってると照さんは少しだけ困ったような表情を浮かべた。

「アイツ、仕事に真面目に取り組むからちょっとの失敗でも凹み易いんだよな」

「それがいい事でもあるんだけどね」

照さんの背後から声がしたかと思うとふっかさんがひょこっと顔を見せた。

「落ち込んで反省するから同じ失敗を繰り返さないし」

「ふっかは見習った方がいい」

「なんでだよ、俺だってなぁ」

突然始まる夫婦漫才はスルーして取り敢えず冷蔵庫からおやつに作っておいたプリンを取り出す。

「ママちゃん？」

ふっかさんが見つめる中、お盆にプリンとカップに注いだ紅茶を乗せる。

「お腹が少しでも満たされたら落ち着くかなって」

「うん、そうだね。ラウールの事お願いするね」

私は頷くとお盆を抱えてラウールの部屋に向かった。