恋人はママちゃん【白】 (ページ35)

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「ごめんね？」

「３秒許さない」

「１、２、３…」

「許す！」

２人で顔を見合わせ小さく笑う。

そんな事をしている間に高台の広場にたどり着いていた。

「わ〜結構高いね」

近くにあったベンチにコーヒーを置いて、ラウールは柵の側まで行き眼下の街に見入ってる。

私はコーヒーを取り出してその横に立ち、ラウールのコーヒーを手渡した。

階段を上がって乾いた喉をコーヒーで潤してから私も視線を前に向ける。

「こんな場所あるなんて知らなかった」

ラウールもマスクをずらし、コーヒーを飲みながらポツリと呟く。

「大きな道から外れてるから意外と人来ないみたいでたまに買い物帰りに寄るんだよね」

「そうなんだ、1人で？」

私の顔を覗き込んで聞いてくるラウール。

「人連れてきたのはラウールが初めてだよ」

そう言えばラウールは嬉しそうに笑った。

「やった、初めてだ」

小さい子みたいにはしゃぐラウールを微笑ましく見つめる。

「ねえねえ、この場所俺とAさんの秘密の場所にしない？」

男の子って秘密基地とか好きだよね、それに…。

何故か２人きりの秘密って事に私の気持ちが高揚してるのに気付いた。

何でなんだろう…。

つい考え込んでしまった私に不安になったのかラウールが眉を下げる。

「ダメ…？」

…飼い主に構って貰えないわんこみたいで可愛い。

「いいよ、２人の秘密ね」

そう笑って言えばラウールは満面の笑みを浮かべた。

　
「そういえば最近ラウール私の事ママちゃんて呼ばなくなったよね」

「あ、うん、ほら、そう呼ぶのドラマ班だけだから巻き込まれたくないって言うか…」

疑問に思っていた事を聞いただけなのに何故か動揺するように言葉を濁す。

「…これもふっかさん達には内緒？」

そう聞いたら凄く真剣に頷くからつい笑ってしまった。

そんな感じで暫く他愛のない話をしながら時を過ごし、またここに来る約束をして帰路に着いた。

マンションに着いて部屋に戻ったら、さっくんにデートどうだったとからかわれたのはまた別の話。