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「あ…閉店ならまた改めて来るよ」
「深澤さんの貸し切り、です」
ちょっと悪戯っぽく笑うAさんはやっぱりラウールに似た顔をしていて、正直めちゃめちゃ可愛かった。
「ありがとう」
ニヤけそうになる顔を引き締めてお礼を言えば、Aさんは微笑んでくれた。
「お久しぶりですね」
「うん、久しぶり。ごめんね、中々来れなくて」
俺が謝ればAさんは首を横に振る。
「お仕事お忙しいですもんね」
Aさんを意識してて来れなかったとは言えないからそう言う事にしとこう。
「まあ、色々とあったもんで」
濁すように言えば、その辺りはラウールで慣れてるのか深く追求はされなかった。
そんな感じで世間話をしつつ、告白のタイミングを見図ろうとはしてるけど。
緊張で何話してるのかも分からなくなってきてる。
俺らしくないな…って内心セルフツッコミをしていたら、Aさんが徐ろに近くにあったバラをラッピングしだしていた。
真っ赤なバラだけを薄紫色のペーパーで包み、濃紫のリボンを掛ける。
そして完成したブーケをAさんは俺に差し出して来た。
「あの…貰ってくれませんか？」
「え？いいの？」
売り物なのに貰ってもいいんだろうかと戸惑う俺にAさんは、さっきよりも頬を染めながら口を開いた。
「深澤さんに、貰って欲しいんです」
そこまで言われて断るのも悪いし、俺は有り難く受け取った。
「ありがとう」
俺の言葉にAさんは嬉しそうに、でもほんの少し困ったような笑みを浮かべた。
その表情の意味が分からなくて軽く眉を潜めた俺のスマホにメールの着信が来た。
「すみません、ちょっと…」
Aさんに断りスマホを開けば、ラウールからのメールで。
『これ今すぐ見て』の文字と共に何処かのアドレスが貼付されていた。
操作をして開けばそれは花言葉のサイトで、バラについて書かれていた。
バラは贈る本数で意味が異なると書いてあるのが目に入った俺はチラリと今貰ったブーケを確認する。
真っ赤なバラが３本。
意味は…。
その答えに俺は一気に顔が赤くなるのを感じた。
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作者名：氷那 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HAK/
作成日時：2023年1月11日 2時
