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「課長〜!あの、加奈山刑事ってなんの事件追いかけてるんすか?」
「あー……お前は当時小6か、、、じゃあこの事件を知らないかもな。」
「?」
「【薔薇園事件】っていうやつだ。」
「なんか、めっちゃ有名な未解決事件っすよね。。って、加奈山さんそれ追いかけてるんすか?!」
「そうだ。」
「ガチっすかぁ、、わー……」
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帰っていく加奈山君の部下を見送った後、私は椅子に腰かけた。
「確かになぁ……あれだけ向上心がある人間ならなんとか解決したくなる事件だよなぁ…」
加奈山くんはこれまでに何度も事件について聞いてきた。
毎日……毎日…………
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12年前。
薔薇園町という小さな町。
そこは年中美しいバラの花が咲き誇っていることで有名で、街の雰囲気もよく、本当に素敵な町だった。
ある2月の寒い日。
町を流れる川が一瞬にして何かに汚染され、しばらくして凍結。町の川の水を頼りに生活していた人々が次々に死亡した。
その上、町の人々からの人気が絶大で、町を代々取りまとめてきたとある大企業の社長とその妻、そしてその子供達が何者かに刺された状態で発見されたのだ。
唯一生き残ったのは6名の高校生と双子の少女達。
しかしこの事件はこれだけでは終わらなかった。
事件当時何者かに刺されたながらもかろうじて生きていた6名の高校生が搬送先の病院から逃走。
頭部打撲とされていた双子の少女達は搬送前に行方をくらました。
その後、この事件は怪しい物証等が何も見つからなかったことで史上最大の未解決事件となり迷宮入りし、地図上から薔薇園という文字は消えた。
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「健人。」
「あ、終わったの?2人は?」
「あそこにいるわ。」
「りょーかい。じゃあ帰ろっか。」
「そうね。風磨は?」
「もーさくらは本当に風磨ばっかりだね。あいつならもう来てるよ。ほら。」
「あ、風磨。」
車から降りて手を降ってる私の大切な人。
「さくら……もうここに二度と来れないかもしれないけどいいの?」
隣でそう言って歩く健人に決心が揺らぎそうになる。
息を吸うと鼻孔をくすぐる懐かしい故郷の匂い。
各所に残る、私たちが育った証。
けれど、もう当時の私達が知っていた町はそこに存在しない。
「うん。いいの。もう、いいんだよ。」
涙と共にクマのぬいぐるみを置いて、私は車に乗り込んだ。
いつか……誰かが"ソレ"を見つけてくれることを願って。
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作者名:麗櫻姫 | 作成日時:2024年1月29日 0時