■見学 ページ31
.
あぁ、苦しいなぁ。満たされるってこういうことかもしれない。
こっそり見に来たリューン。行くつもりなんてなかったけど、気付いたらマネージャーに電話してた。
初演のとき、何度も電話をして、会うたびに励まして、その頭を何度も撫でた。でも、もうあの時みたいに不安そうな顔をした自信のない丈一郎はどこにもいなかった。楽しそうに舞台に立って、自信に満ち溢れていると言うと言い過ぎかもしれないけど、確実に手応えを感じているその顔に胸が苦しくなった。
「あ、もしもし和也？おつかれさま」
「Aちゃん、どしたーん？」
「んー、今大丈夫？」
「うん。今1人やで」
「今日観に行ってん」
「へ？なにを？」
「リューン」
「……ええっ？！？！」
「あはは、めっちゃ変装して普通にお客さんとして入ったら全然ばれへんかったで。2階席の後ろの方やったし」
「まじか、」
「うん。まじ」
「どやった？」
「ふふ、すごかった」
「へへ、やったぁ」
「ほんまに、すごかった」
ここで泣くのはズルい。でも、込み上げてくるものが我慢できなくて、少しだけ涙が出てしまったのは鈍感な和也にはバレてないはず。
みんな進んで行く。私だって進んでる。それが誇らしくて、嬉しくて、幸せで、少しだけ寂しかった。
私がおらんくても、なんて今はただの悪者のセリフでしかない。わかってる。わかってんねん。
「Aちゃん」
「ん？」
「観に来てくれてありがとう」
「どういたしまして。あ、カテコはひどかったけどね！」
「もー！それはええやんかぁ。」
「良くないわ！丈一郎やってアホなんやからあんたもちょっとはしっかりしぃ！」
「へへ、丈くんに助けられてまーす」
「もー！」
やっぱりシンメなんやなぁ、この2人。いいなぁ、そう言うの。
今もなお過去に想いを馳せてしまうのは、今に満足してないからなのか。どうすればいい、どうしたかったんだ。分からない。
分からないけど、嬉しそうな顔をして帰ってくる彼を受け止めたかったと思ってしまう。
「Aちゃん、今度ご飯行こう？」
「うん。もちろん」
「会いたいよ」
「うん、わたしも」
会いたいよ。
2人抱きしめあって眠った温もりも、不器用な手つきも、優しい眼差しも、全部が恋しくなるときがある。
でも、そんなこと思っちゃいけない。それは、裏切りだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 792人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rrrr(プロフ) - 丈くんといちゃいちゃ見たいです！あと西畑くんと仲直りしてほしいです！ (2019年11月22日 19時) (
レス) id: 5de1dbfa32 (このIDを非表示/違反報告)
ラッコ - 無理言って申し訳ありません！Travis出演の素敵なお話ありがとうございました！嬉しかったです！！今後も更新楽しみにしております (2019年8月29日 12時) (レス) id: 5b926bea01 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - まなさん» ありがとうございます！無知により失礼しました。修正致しました！ (2019年8月19日 19時) (レス) id: f81c6301ac (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - 如恵留の川島が違ってるみたいです！ (2019年8月17日 20時) (レス) id: 5d5f7ff18d (このIDを非表示/違反報告)
ふーか - トラジャ出して頂きありがとうございます!!! 更新頑張ってください!!!! (2019年8月17日 11時) (レス) id: 20fb14c53f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aoi
| 作成日時：2019年4月3日 12時
