死神が恋なんて笑わせる【青×桃】 (ページ9)

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「……あー、嫌なこと思い出したな。」

俺の腕には今日も涼しげに揺れる青色のリング。

目の前で自分の想い人が死んだことを受け入れられない同僚を目の前にして以前の自分を思い出した。

同僚、もといしげの姿が望が死んだ時の俺と重なって見ていられなくなった俺はしげの背後から勝手に手を伸ばした。

「神山智洋さん、飛び降り自殺っと、」

ぽんっと押されたハンコに勢いよく振り返ったしげの顔は怒りと悲しみとでぐちゃぐちゃな、人間らしい表情をしていて。

「おい、流星。何してんねん。」

「何って、しげが全然押さへんから。って言うかその様子やと一生押さへんやろ。」

「……、智洋は、死んでない、」

「死んだ。見たやろ?あんなに血ぃ流しとったら人間なんて死ぬやろ。」

「死んでないっ!!やって、あんなに、あんな」

涙こそ流れてないものの、酷く傷ついたように言葉を吐くしげが今死んだ人間。神山智洋くんに恋をしていたのは恋愛経験者？の俺からすれば一目瞭然やった。

「はぁ、可哀想やな。」

「は?なにが、?」

「しげさぁ、神山智洋に恋してもうたんやろ?」

「……は?」

意味がわからないとでも言うように眉をひそめたしげ。

「そんなわけ……」

でも、その言葉が確信をついたのかしげの瞳からとうとう涙がこぼれおちた。

「ほなさ、なんで泣いてるん?」

「え?」

きっと、その時がしげがやっと人間を好きになったんやって気付いた瞬間やったんやと思う。