10 ページ27
・
「Aってほんと昔からそう。誰にでも優しくて、いい顔しかしねぇじゃん」
ドライヤーを化粧台に置いて私の背後に立ったまま鏡越しに私を見て口を開く。
「……そのままでいてくれたら、俺もその他大勢の一人かって諦めついてたのよ。なのにお前ときたら、俺がデートに誘った時なんて言ったか覚えてる？」
ふーっ、と鼻から息を漏らすふっか。
「………えっと、」
「覚えてねぇよな。だってすげぇあっさりと俺の手を握って”ふっかに誘ってもらえるのずっと待ってた”だもんよ。なによこの子、ずっと待ってたの？かぁいいねぇってなるじゃん」
私の肩に触れた手がスルスルと前に下りてきて、両腕が肘からゆっくりと曲がると私をギュッと後ろから抱きしめた。
「ずっと待ってたってなによ」
「待ってたから、あの時はふっかモテモテだったでしょ。私となんて遊ぶ暇なかったくらいに」
一度約束をすっぽかされてすごくショックだったことがあった。
それ以来自分からは誘わなくなったんだよね。
「そうよ〜俺ねモテんの。俺からアピールしたら、大体の子は数日後には深澤くん好きです！付き合ってください！ってのがお決まりよ？ だからさ、Aもそうなると思ってたんだよ」
「………そっか」
「なのにお前ときたら10年以上も俺からのアピールすっとぼけてんじゃん。そろそろ言わない？ ……辰哉、好きだよって」
私の肩に顔を埋めたふっかから、初めて聴いた”好き”の言葉。
あれほど好きとは自ら言わないと言っていたくせに。
「………言わないよ」
「っ、……駄目なの？」
ふっかが駄目なんじゃないんだよ。
「ごめん、ね」
「……まじかー。これでも結構自信あったわ俺。あー、そっか、うん、うんうん」
ふっかは顔を上げない。
その代わりに首筋に当たるふっかの横顔から伝う涙の感触は分かって、思わず伸ばしかけた手はふっかに止められた。
ガシッと掴まれて、もう片方の手は私の頭をぽふっと撫でる。
「……きっついな。だから俺やなのよ、自分から動くの。あー今は顔見ないでよ。ちょっとだけこのままでいさせて」
「っ、ふっか……」
「ん〜？」
涙混じりで、それでも私の呼び掛けに答えてくれる優しさ。
ふっか、ふっか、ほんとは大好きだよ。
でもそれは君に恋してるとかの好きじゃないんだ。
ただね、これだけは言いたい。
「ふっかが居たから、頑張ってこれたんだよ。好きで居てくれてありがとう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3676人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぃ(プロフ) - TwitterのDMを送らせていただいためぐみと申します。最近SnowManを知って、一気に読み進めてきました。切なくて涙がとまりません(>_<)続きも楽しみに読ませていただきます。 (2022年12月25日 19時) (
レス) @page47 id: 6ed58a0011 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» コメント、リクエストありがとうございました！遅くなってしまってすみません。ほんとはもっと賑やかものがいいかなって思ったんですが終盤なので、作品と絡めたら暗い感じになってしまって(汗)ちょっとでも楽しんでもらえていたら嬉しいです！ (2021年9月4日 18時) (レス) id: bf817d2202 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんばんは☆ﾘｸｴｽﾄ、ありがとうございました♪ﾒﾝﾊﾞｰさんの反応はどんな感じなのかなって、完全な思いつきだったので、こんなｽﾃｷなお話にしていただき、感謝しかありませんv(￣ー￣)v ありがたや〜☆ (2021年9月3日 18時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年8月17日 13時
