崩したい、その表情。【黒赤】

諦めとそれから。 ページ47

＿＿蓮


舘さんの部屋に帰る前に、２人で買い出しをした。




３つまでなら俺の好物を作ってくれると言った舘さんに、

「ん〜…じゃあ１つは舘さんが作りたいものを作って欲しいです。」

なんてワガママを言ったりして。




くふくふって笑い合いながら食材を選ぶ時間が、
あー、これが多分幸せってことなんだって。
馬鹿みたいだけど本当にそう感じれた。



「えぇ、なに作ろうか…」

「楽しみにしてますね、俺。」







舘さんが作ってくれたのはグラタンだった。



玉ねぎは小さめに切られてるんだけど
その分お肉が大きくて、それでもってチーズたっぷりの。





グラタンって店でしか食べたこと無い…なんて感動した。





「ほら…冷めないうちにたべて？」

「はい、いただきます。」



舘さんの作る料理は、
何度か食べたことがあるけど



冗談なしにこれがいっちばん旨かった。



温かくて優しくて、
心がポカポカになる味がした。



「めっっっちゃ旨いっす！

俺、これから好きな食べ物聞かれたらグラタンって答えます。」



「え〜…大袈裟だなぁ目黒は。」


「本当にそのくらい好きです！
…もう頻繁に舘さんの料理が食べられないと思うと

結構寂しいっす。」




溢れ落ちた心の声は、

俺たちの間に転がっていくようで




言ってしまってから少し後悔したけど…




舘さんの視線が少しだけ揺れたのがわかる。
もしかしたら、同じ気持ちなのかなって…。




「…しんみりさせないでよ(笑)

言ってくれればいつでも作るよ。」



「俺、本気にしますよ…？」




「冗談で言わないよ、ほら飲も。」




そう言って差し出された缶ビール。



緩んだ頬をきゅっと引き締めて、


俺たちはひとまずの区切りとして
互いのそれをコツンと合わせて祝杯をあげた。

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