崩したい、その表情。【黒赤】

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＿＿＿蓮


捕まれた手は
ぐっと舘さんの方に引き寄せられ

ぽすん、と

俺の胸元に額を押し付けて、それから
遠慮がちにシャツの布を握りしめる。



「舘さ…ん、」



その身体は小さくて震えていた。



「…ぇ、ちょ、大丈夫ですか…？」

「…無事で、良かった。」



「…。」



握りしめた手に力が込められるのが分かる。

嬉しくて、もどかしくて、悔しくて…

舘さんの肩に手を添えると、
ゆっくりだけど顔を上げて
俺と目を合わせてくれた。


眉毛は不安げに下げられていて、
瞳は少し潤んで、綺麗な唇はぎゅっと結ばれたまま。


舘さん…？と声をかけると、


小さな声で俺に話し始めた。



「来ないでって言ったじゃん、」

「…どうしても、じっとしてられなくて。」



「何かされてたらどうしてたんだよ。」

「舘さんに何かされた方が後悔するから、」





「…なんだよそれ…。」



少し責めるような口調に
嘘のない、俺なりの言葉で答えていくと

不安げだった表情は、

悲しいような、
怒りを含んだようなものに変わっていた。



「そんなの、」
「そんなの俺だって一緒だよ、
目黒が…お前になんかあったりしたら、

俺だって！」


「…、」




「翔太も佐久間も戻ってこなくて、
翔太スマホ置きっぱなしで…目黒からメッセージの通知来てて…約束の時間は過ぎてるし、胸騒ぎ止まんなくて」



もしかしたらって…そう思ってメンバーの制止を振り切って楽屋を飛び出したら、待ち合わせ場所に俺たちがいた。



「俺の気持ちは関係ないのかよ…、」




悲しい言葉と一緒に、
握りしめられていた手から力が抜けていく。

離れていってしまいそうな舘さんを
思わずぐっと引き寄せた。



「…ごめんなさい。」
「…。」


「心配してくれてたのも、俺に危害が来ないように言ってくれたのも、ちゃんと分かってました。」



舘さんの気持ちちゃんと伝わってたよって、
言葉で言っておかないと。



「自分だって怖い思いしてるのに、
本当に優しい人ですよね…。」

「そんなんじゃ…」



「それでも、

それでも俺が守りたかったんです。絶対。」



抱き締める腕を強くする
お願い、もう少しだけ…。



「…俺が救いたかったの。」







「…目黒って、本当に変わってるね…。」

「俺は本気ですから。」




だらんと下げられていた舘さんの腕が、
今度は俺の背中に回される感覚がする。





「…ありがと…目黒、ありがとう。」

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