崩したい、その表情。【黒赤】

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＿＿涼太

「翔太にさ、目黒と居残り練習してたこと言っちゃったんだ…ごめんね？」


改まって言うことではないと分かっているが。

あの時少し突き放すようにしてしまったから、
謝らなければと思っていた。
目黒は驚いた表情を見せたが、すぐに照れたように笑って返した。



「翔太くんから詰められたんすよね、(笑)
こないだ飲んだときに聞きました。」

「うん…目黒の前では隠すような言いかたしたのに。」

「大丈夫ですよ俺は、だって…」



少しだけ身を乗り出すようにして言葉を紡いでいく彼。



「俺と２人の時間、邪魔されたくなかったんすよね。」


「…っ。」



ね、って首を傾けた時に
長い前髪が揺れた。綺麗だと思った。

その隙間から覗く目が意地悪く光っていて、
少しだけ…ほんの少しだけドキッとした。

知らぬまに出ていた独占欲ともとれる自分の行動を
見透してるような笑みを浮かべる目黒。

見つめられるのが耐えられなかった。



「…からかうなよ、」

「ははっ(笑)すみません…あ、料理来た。」



自分の方が先輩のはずなのに
すっかり目黒のペースに持っていかれてしまった。
…かなり悔しい。



食前酒の入ったグラスを合わせて乾杯した後、
ぞろぞろと運ばれてきた料理を味わう。

食べる度にうま、やばい。と呟く目黒は、
本当に先ほどの大人びた表情を見せた彼と同じ人物かと疑うくらいに無邪気だった。



「ほんと、見てて飽きないね…。」

「…ん、なにがですか？」

「ううん…何でもないよ(笑)」



思わす言葉が漏れてしまったが、
気にせずに手を進めると目黒もふ〜んと言いはしたが、
つられて料理を食べ進めていった。

お酒が回りだすと楽しくなってきて会話も弾んだ。

練習でしか会わなかったし、こうやってお酒の席で話すのもいいな…。

翔太は目黒と仲が良いし、こういう心地のいい時間を前から過ごしていたのかと想像すると、

なんだか２人の関係が羨ましく思えてきた。




「ねえ目黒…

翔太ばっかりじゃなくて、
たまには俺ともこうやって飲もうね。」



気づいたらこんなことを口走っていて…、

自分でも顔が綻んでいるのが分かると、
一気に気恥ずかしさが追いかけてきた…。



「舘さん、」

「…ごめん、ちょっと見ないで…。」



慌てて顔を覆うとした手は、



「隠さないで。」



身を大きく乗り出してきた目黒に捕まれてしまっていた。

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