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「1.2.3.4…5で軸足を変えるの。」
「4…5で変える…。あ、こうか!」
「そ。ね、その方が次の動作行きやすいでしょ?」
「はい!何回やっても上手くいなかくて…本当にありがとうございます。」
出来たことが嬉しくてお礼をすると、舘さんは微笑んで「どういたしまして。」ってペットボトルの水をくれた。
「…ちょっと休憩しよ?」
「え?…はい。」
リハ室の壁にもたれて、2人ならんでしゃがみこんだ。
舘さんがくれた水は、渇いてた喉に染み込んでいって、
自分が感じていた焦りも一緒に潤してくれるような気がした。
隣をちらっと見ると
舘さんも同じように俺を見ていて、目があったことに驚いて肩が上がった俺に、先程と同じような微笑みをくれた。
先に口を開いたのは舘さんだった。
「…俺も同じだったんだよね。」
「え?」
「歌舞伎出たての時。ここで結果出さなきゃってとにかく周りにおいてかれないように必死でさ…。」
「滝沢くんから休めって言われても、素直に言うこと聞けなくて…ずっと練習してた。」
もしかして目黒も言われてるんじゃない?って訪ねる舘さんに無言で頷くと、少し苦笑いを浮かべた。
「分かるよ…。その気持ちよく分かる。」
「俺…なにか目立った物を持ってるわけでもないし、今回だって…代打で出ることになったから、余計に足引っ張れないなって思って、それで」
「目黒」
溢れでた俺の言葉を舘さんの静かな声が塞き止める。
その掌がゆっくりと俺の手に重なった。
ペットボトルを握っていた手には、いつの間にか力が入っていて、ボトルの形が歪んでしまっていた。
「あ…。」
「…目黒は真っ直ぐだね。」
「焦る気持ちも、不安になる気持ちも、俺はよく分かるよ。…昔の俺を見てるみたいで、少し危なっかしい。」
「滝沢くんが言ってた、休むことも練習のうちって言葉、今は理解できるんだ。無理して体を悪くしたら元も子もないよね…?」
「…はい。」
「ふふ、俺は目黒とこれからも長く一緒に戦っていきたいと思うよ?…だから、いっぱい練習したらしっかり休んで。共に進んでこうよ。」
「……グスッ…ぁ…は、はい!」
穏やかな声に熱い思いを感じて、気がついたら涙が頬を伝っていた。
泣くなよぉ〜…って照れ臭そうに笑うその表情は、いつもの気品溢れる姿とは違った、
ドクンって、心臓が高鳴った。
もっとこの人と仲良くなりたい。
この時だと思う、
俺の胸に、小さな恋の種が芽を出したのは。
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ニナ(プロフ) - 更新めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます!どうかどうか、二人の思いが重なってほしい…涙 (2021年10月5日 23時) (レス) @page49 id: b294cacc31 (このIDを非表示/違反報告)
無(プロフ) - ニナさん» コメントありがとうございます◎更新に波があって申し訳ありません…ぜひぜひ今後とも楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2021年10月5日 23時) (レス) id: 7e11e0c637 (このIDを非表示/違反報告)
無(プロフ) - 魏紫姫 桜描さん» コメントありがとうございます◎!めめだていいですよね〜…作品も供給も是非もっと増えて欲しいですよね、、 (2021年10月5日 23時) (レス) id: 7e11e0c637 (このIDを非表示/違反報告)
ニナ(プロフ) - 初めまして。ものすごく続きを楽しみにしている者です。次の更新、マイペースでもちろん構いませんので、楽しみにしてますね。応援してます! (2021年9月30日 22時) (レス) id: b294cacc31 (このIDを非表示/違反報告)
魏紫姫 桜描 - 初コメです!俺も,めめだて好きなのでめっちゃ嬉しいです!俺も,めめだての小説書いてるので、読んでみてください!応援してます! (2021年8月1日 12時) (レス) id: 067498defb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無 | 作成日時:2021年4月19日 21時