崩したい、その表情。【黒赤】

焦りと恋の音 ページ1

俺が宇宙メンバーとして活動する前から既にsnowmanはいて、俺たちジュニアを引っ張っていく存在だった。

彼らががむしゃらに走っている背中を近くで見てたし、
滝沢くんの舞台に出させてもらえるようになってからは、より近くでその背中を支えられることが出来れば…
そんなことを考えながら、俺も一生懸命に走った。




初めての歌舞伎の稽古のことを、今でも鮮明に覚えている。

代打での出演ではあったが、自分が求められていることを返していなかければ次はない。

分かっていた。

ここで振り落とされたら駄目だ…。
出来る出来ないじゃない、やるしかないんだ…。

滝沢くんからか「休むことも練習のうちだぞ。」と咎められたりもしたが、当時の俺には休むなんてことが出来なくなってて…。

レッスン前も、休憩時間も居残り練習も、鏡の前に立ち続ける日々が続いた。





あの日、


舘さんと初めて話した日も俺は鏡の前にいた。


全体での練習が終わったあと、空きリハ室でダメ出しを受けた部分のフリを復習していた。


「…はぁ…はぁ、」


どうしてもステップが自分のなかに落とし込めなくて、何度も掌の上の画面と、鏡に写る自分を見比べてみるが中々上手く行かなくて。


「あぁ〜…くそっ、！」


がしがしと頭をかきむしって、苛立っていた。
でも苛立っていたところで余計上達なんてしない。

もう一回…。

深呼吸をして意識を整えて鏡に向き直ろうとしたとき、
俺の横に、すっと誰かの気配を感じた。


「目黒…ここのステップはね、こうやるの…。」

「え、だ…舘さん。」


顔を上げるとそこにいたのは、
俺が何回やっても上手くいなかかったステップを軽々とやってのける舘さんだった。


「ほら、一緒にやろ。」

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