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you side
『よっ』
木から木へと飛び移り、夜の森を抜けていく。
木々の隙間から覗く月明かりは、
とても優しく私を照らして。
あぁ、なんて綺麗なの。
こんな時間に月を見ているのは私だけ。
女子はお肌のために寝ている時間
………って!
『……ったぁ!』
その月明かりに見惚れたせいで、
鋭く伸びていた枝に気付かなかった。
頬を指でなぞってみると、指先に血液。
『痛ぁ……帰ったら消毒しなきゃ』
幸い、もう少しで家……利吉くんの家だ。
ぴりぴりする頬に少しベソをかいて、私は家路を急いだ。
静かに板戸を開けると、部屋の中は暗い。
利吉くんはいるのかしら。
お
互いの仕事はとくに把握していないし、
する必要もないから知らない。
……はずなんだけれど、
利吉くんの私のスケジュールに対する興味は凄まじい。
今日だって朝に言われた。
"何時!どこに!何しに行くんですか!"
"いや、言わないよ絶対"
"何かあったらお迎えに行かないと"
"利吉くん本当に忍びの人?"
寝食を共にしている時点でも驚きなのに。
私への興味はまだ薄れていないようだけれど、
これもまた時間の問題。
……もう傷付きたくない。
誰かに恋をするなんて、もう。
それなのに
"……飽きたら放り出すくせに"
そんなのことを口走ってしまった。
そして私の指先は自然と唇に触れる。
"Aさん、心配しないで"
利吉くんの言葉が、その表情が
身体を駆け巡って
『っうわぁああぁ』
はっ恥ずかしい!!
恥ずかしさのあまり、ジタバタ暴れたときだった。
利吉「……何してんです、さっきから」
『!!!!』
いないと思っていたから、驚いた。
利吉くんが奥の板間から顔を出していたのだ。
利吉「Aさん、おかえり」
『た、ただいま』
利吉「……ん?ちょっと待ってください」
利吉くんが眉間に皺を寄せたかと思うと、
一瞬にして私の目の前。
ぐっと顔を近付け、私の顔を凝視した。
『な、なに』
利吉「何って、逆に聞きますけど。これ何?」
怒っているような低い声で、
利吉くんは私の頬を指差した。
『?……あぁ!帰りに怪我したの』
利吉「ひっ」
利吉くんの魂が抜けた音がした。
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イリス(プロフ) - 夢主と利吉の関係性も好きだけど、なにより北石さん大好きですwww (2022年12月5日 0時) (レス) @page13 id: af492db464 (このIDを非表示/違反報告)
Saku*no(プロフ) - こんにちはどの作品も利吉さん好き!これからの更新頑張って下さい!! (2022年10月30日 10時) (レス) @page1 id: 39a66916ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2022年10月30日 10時