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土井side
これから兵助と予定していた、火薬庫の整理と掃除。
……なんだけど。
兵助が実習のため、Aが来てくれることになった。
何もおかしいことはない。
彼女は火薬委員会委員長なのだから。
……なんだけど。
おかしいのは私だ。
Aより先に火薬庫に来たんだけれど、
さっきから心臓がばくばくだ。
今からこんなんじゃ、
Aが来たらどうなるかわかったもんじゃない。
胸に手を当て、深呼吸だ。半助!
土井「落ち着け、落ち着け……」
『何ぶつぶつ言ってるんです?』
土井「う、わぁっ!!」
飛び退いた。
それはもう、飛び退いた。
背後からの声の主は、Aだった。
『ごめんなさい。そんなに驚いた?』
土井「う、うん。大丈夫」
そうですか、とAはあるものを差し出した。
『これ』
手渡されたのは、先日の手ぬぐい。
綺麗に洗ってあって、石鹸の香りがする。
土井「こんなに綺麗に……」
『とても助かったので……ありがとうございました』
そう言って、Aは微笑んだ。
土井「かっ……!!」
『……か?』
危ない。
土井「な、なんでも、ない」
危なかった。
その変わらない花のような笑顔。
大人になったAは美しさも加わって、
か、可愛い……。
はぁ……と目を手で覆って、息を吐く。
心臓はまだばくばくしていて、なんとか呼吸を整える。忍ともあろう者が、情けない。
『土井先生!なんでもないなら良いけど、
ほら、掃除しましょう』
私はAにぐいぐい背中を押され、
火薬庫の中へと進んだ。
薄暗い火薬庫の中には、焙烙火矢や埋め火、
百雷銃や狼煙などの火器。
また、火薬の配合研究材料なんかが仕舞われている。
『さて、全部出して整理して……』
火薬庫の整理はいつものことなんだけれど、
Aがいるというだけで特別感がすごい。
緊張するし顔を見るのも一苦労なんだけれど、
とても……嬉しい。
『土井先生は火薬のスペシャリストだもんね』
土井「そんな大それたもんじゃないよ」
『昔、教えてくれたでしょ?火薬の調合の仕方とか……
私も利吉も、半助さんからたくさん学んだもん』
ね!なんて、首をこてんと倒す君が、
"半助さん"って呼ぶ君が、
可愛くて
うん、心臓に悪い。
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梅こんぶ(プロフ) - こんばんは!そして新作おめでとうございます!私も土井先生も大好きでいつもはなさんの作る小説&ドキドキ&恋愛&いろいろ楽しみにしていました☆後お気に入り登録しました無理せずに頑張ってください! (2021年11月21日 1時) (レス) id: 067eb46949 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2021年11月20日 23時