【忍たま】私は久々知くんが。【久々知兵助】

貴方の胸元に ページ6

久々知side



『どうしよう』




忍たま長屋へ来てみれば、誰もいないんですけど。


久々知くんが貸してくれた手ぬぐいを
返しに来たんだけれど。



誰もいないんですけど。



出直すかと悩んでいると、ちょうど障子が開いた。




尾浜「うわ、……あ、Aか」




うわ、って何？




尾浜「どうしたの？こんなところで」



『く、久々知くんいる？』



尾浜「兵助なら火薬委員の仕事があるって
　 言っていたから……火薬庫にいると思うけど」



『そっか……じゃぁこれ、
　後で渡しておいてくれる？』




そう言って手ぬぐいを見せると、
尾浜くんはあごに手を当てて何か考え出した。


聞いているのか。




『ね、これ』



尾浜「いや、これは今すぐ
　 Aが渡しに行った方が良い」



『え。そうなの？』




そうだ、と尾浜くんは勢いよく頷いた。
そして私を手招きして、
誰も見ていないことを確認してから小声で言った。




尾浜「兵助のやつ、どうしてもこれが必要だって
　 言っててさ……」



『それは大変！』



尾浜「俺、今から用があって……
　 A、すまん。頼めるか？」




そんなに大切で必要なものだったなんて。
すぐに返さなかった私が悪いよね。




『任せて、行ってくる！』




私は火薬庫へ向かって、走り出した。




尾浜「よーし、喜べ兵助！」




◆◇


火薬庫の陰からじっくり様子を伺っている。


あ、久々知くんじゃん！？みたいな感じで
声を掛けられる女ではないのだ。




兵助「あとは鍵を閉めて終わりだし、
　 皆は先に戻っていいよ。俺がやっておくから」



「「ありがとうございます！」」




後片付けは久々知くんが引き受けたらしく、
他の生徒たちが散らばっていく。




兵助「よし……うわぁっ！……ってA？！」



『はっ！！ごめんなさい！』




気配を殺して陰から見ていたので、
ものすごく驚かせてしまった。




『ご、ごめんね、忙しいのに』



兵助「いやいや、全然良いんだけど……
　 どうしたの？」




私は久々知くんのきらきらの笑顔と
長いまつ毛に釘付けだ。




『そうっ！あの、この間の！
　返すの遅くなってごめんね、ありがとう』




手ぬぐいを持って差し出した手が、
見事に久々知くんの胸元に勢い良く当たった。




兵助「ぐはっ」





私、最悪……っ！

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