【忍たま】私は久々知くんが。【久々知兵助】

悔しい ページ29

you side



どの時代も、どうして女子というものは
この手の話が好きなのだろう。



まぁあれよ……そうそう、恋の話。



惚れた腫れた、誰が良い、誰が嫌。
補習の終わった放課後、
教室では生徒たちが話に花を咲かせる。



忍たまの誰々が……って話だったし、
なんだか懐かしくて可愛くて、
生徒たちの話に乗ることにした。




『いいねぇ、青春だね』



「私たちだって、恋したいなって思うのよ」



『まぁ、在学中は駄目！ってかんじだしね』




とか言うけれど、私は当時、
兵助……久々知くんに夢中だったのだけれど。


そんなことを思い出して、
きゃー！とか心の中でジタバタしていると






「久々知先生って素敵だと思わない？」





ひとりが言い出した。


あの頃みたいに、兵助の名が聞こえた瞬間、
どきっと心臓が大きく跳ねた。




「わかるー！格好良いよね。真面目そうだし、
　挨拶したときの笑顔が爽やかなの！」



「私もこの間、重い荷物を運んでいたら
　持ってくださって……恋人いるのかなぁ」


　
「忙しそうだし、いないんじゃない？」




…………兵助、モテてる。

いや、あの頃よりモテてるんですけど。




「A先生は久々知先生と旧友なんですよね」



『えっ、うん。まぁ、うん』




急に話を振られて、変な返事しちゃった。




「素敵だと思いますよね、久々知先生」



『そ、そうね……
　昔も真面目なところがモテてたと思う』



「恋人、いるんですかね？」




そ、そんなこと聞かれても………

はーい、相手は私です！なんて言えない。




『ど、どうだろうね。忙しいしね……
　じゃ、じゃぁ私はそろそろ』




私は集めた補習のテスト用紙を引っ掴んで
教室を後にした。





◆◇





私と兵助は食堂で向かい合って、夕食を取る。




兵助「…………何？」



『何もないよ』




言葉数少なく、もぐもぐとひたすら
お皿を空にしていく私を見て、変だと思ったらしい。




兵助「……ふぅん？いいよ、後で聞くから」




にっ、と笑う兵助。


不覚にも胸がときめいてしまって。





あの頃はお互い必死だったはずなのに、
兵助はどんどん余裕のある男になっていく。




『……悔しい』

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