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利吉side
まさか、行き先が同じだったとは。
あれから、がっちり私の腕を掴んだ
彼女の手を外して、姿を隠したというのに。
だって、
運命だの、待ってくださいだの
そんなのどうでも良くて、
私はAの……癒しの元へ向かいたかったから。
初「やっぱり……！」
利吉「……あ、さっきの……っと！」
門をくぐるとAの姿が見えて、
一気に心が和んだのに……初という娘が
Aから離れて、私に飛び込んできた。
利吉「……ちょっと、すまないが離れてくれないか？」
初「嫌です！貴方も忍術学園に向かっていたなんて……
嬉しいっ！」
やっぱり運命！とか叫んでいるけれど、
話が通じないのかな、この子。
こんなことなら、
急いでこの子より早く到着すれば良かった。
道中たまたま仕事仲間に会って、
情報を交換したりと寄り道をやめておけば……
『……お知り合いだったんですね』
Aは置いてけぼりを食らったような顔で、
私たちを見る。
初「Aさん、そうなんです！
危ないところを助けていただいて……
私、運命を感じちゃって！！」
『う、運命……』
利吉「違う違う、やめてくれ」
誤解を招くようなことを言わないで欲しい。
そう思ってとっさに吐いた言葉に、
初は大きく目を見開いた。
初「や、やめてくれって、そんな言い方！
……いいですよ、
私、貴方を振り向かせてみせるんだから」
なぜそうなる。
私は愕然とした。
◆◇
『気をつけて帰ってね』
初「Aさん、ありがとうございます」
それから……と、
初はAの隣に立つ私をチラチラと見ながら
初「利吉さんと仲良くなれて、嬉しいです」
利吉「勘違いじゃないか」
初「ひどい！
もう、……それではまた」
ぺこりと頭を下げて、初は忍術学園を後にした。
『……すごいですね、あの積極さ』
利吉「すごいなんてもんじゃない」
私は機嫌が悪い。
利吉「Aに癒されにきたのに」
『えっ』
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作者名：はな
| 作成日時：2021年6月5日 22時
