【忍たま】利吉さんはいじわるだ。④【山田利吉】 (ページ24)

今日:33 hit、昨日:11 hit、合計:83,260 hit

22 ページ24

you side

『ん………はっ！』

い、いけない。

仮病だっていうのに、
うっかり眠ってしまうなんて。

女中「あら、目が覚めましたか？」

慌てて起き上がると、先程の女中さんが
布団の端に座っていた。

『すみません、眠ってしまって』

　

よだれは……うん、大丈夫。

女中「とんでもない。気分はどう？」

『はい、だいぶ良くなりました』

女中さんは湯飲みに水を入れてくださり、一口飲む。

気になるのは、利吉さんのことだ。

『あの……さっきの女中さんは……』

女中「あぁ、莉子ちゃんね。
　今は夕食の準備中だと思うわ。
　さっきも一度、貴女を心配して見に来たのよ」

良い子よね、と女中さんは笑った。

『えぇ…本当に…』

利吉さん、様子を見に来てくれたんだ。
私寝ちゃってたからなぁ……怒られそう。

そのとき、また障子の向こうから声がした。

「おい、開けるぞ」

声の主は、主人の側近という男性のものだった。

◆◇

女中「……失礼致します」

側近の男性が入ってくると、
女中さんは頭を下げてから部屋を後にした。

男「女、体調は？」

『よ、良くなりました。
　休ませて頂いてありがとうございます』

そうお礼を言うと、男性は頷いた。

男「そうか、では一緒に来てもらおう。付いて来い」

『……えっ、ど、どこにっ……ぐぇ』

また男性は私の首根っこを掴んで、
廊下を歩き出す。

男「旦那様のところだ」

『でも私はっ……女中にはなれませんっ』

ジタバタしてみるけれど、抵抗も虚しく
ずるずると廊下を引きずられてやってきた部屋の前。

やっと掴んでいた首根っこを解放され、
小袖を綺麗に整える。

男「この部屋に、旦那様がおられる」

私は女中にはならないし、
この屋敷の主人に会う気もないのに。

『いや、私は帰りたいんですが』

男「お前のどうこうを決めるのは、旦那様だ」

目の前の障子が開いたかと思えば、
とん、と背中を押されて

『きゃ……！』

部屋に一歩、踏み入れた。