【忍たま】利吉さんはいじわるだ。④【山田利吉】 (ページ20)

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you side

男「おい、そこで何をしている」

お屋敷から出てきたらしい、大きな男性。

『あっ……いえ、あのっ』

突然で驚いてしまい、声が上擦る。
というか、必死で絞り出した声。

男「ただの町娘か。……しかし、そうだな」

そうそう。ただの町娘です、と頷く。

それでこの場を去れるかと思ったのに、
なぜか男性は私をじろじろと見ている。

『あ、あの』

男「……あぁ……うむ、女。女中にならんか？」

『………は？』

数秒考えて、間抜けな声が出た。

だけど男性は、またニヤリと笑って

男「いや、特別に主人専属の……でも
　良いかもしれんな。よし、来い」

『えっ……ちょっ…！！』

特別に？せ、専属？えぇえ？

また考えているその間に
ぐいっと首根っこを掴まれて、私はずるずると
お屋敷の中へ引きずられていくのだった。

◆◇

『ぐぇ』

お屋敷の中に入ると、
なんとか掴まれていた首根っこは解放された。

ちなみにこの男性。
どうやらこのお屋敷の主人の、上級使用人らしい。

廊下を歩きながら、
すれ違うのは綺麗な女中さんばかり。

絶対に私が女中になることはないけれど、
私じゃとても、馴染める顔じゃないや……

男「それでだな、率直に言うがお前は器量が良い」

男性は私の数歩前を歩きながら言う。

『そ、そんなことは………わっ！』

急に誰かにぐんっと腕を掴まれ、
脇の廊下に引きずり込まれる。

その人は口元に人差し指を当てて、
私の動きを制止させた。
綺麗な女性で、恐らくここで働く女中さんだ。

男「いいや、きっと旦那様も気に入る。
　まぁまず女中としてこの屋敷に……あれ？」

振り向いた男性は驚いた顔をしている。
だって、いるはずの私がそこにいなかったから。

男「お、おい！どこへ行った！」

すると女中さんは、慌てる男性の前へ出て

「彼女、ちょっと具合が悪いそうで。
　あちらの部屋で介抱してきます」

男「あ、あぁ。そうか」

そう言って、私の手を引いて奥の部屋へ歩き出す。

「……で、こんなとこで何してるんだ」

『へ』

私の手を引く優しい女中さんは

まさかの、利子ちゃんだった。